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マンゴー ( Japanese )

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マンゴー Mango and cross section edit.jpg
マンゴー
分類 : 植物界 Plantae : 被子植物門 Magnoliophyta : 双子葉植物綱 Magnoliopsida : ムクロジ目 Sapindales : ウルシ科 Anacardiaceae : マンゴー属 Mangifera : マンゴー M. indica 学名 Mangifera indica L. 和名 マンゴー 英名 Mango

マンゴー(檬果、芒果、学名: Mangifera indica)は、ウルシ科マンゴー属の果樹、またその果実菴羅(あんら)、菴摩羅(あんまら)ともいう。マンゴーの栽培は古く、紀元前インドで始まっており、仏教では、聖なる樹[1]とされ、ヒンドゥー教では、マンゴーは万物を支配する神「プラジャーパティ」の化身とされている。

植物学上の特徴と分布[編集]

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マンゴーの花
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アーウィン種の果実
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ペリカンマンゴー種の果実

原産地はインドからインドシナ半島周辺と推定されている。そのうち、単胚性(一つの種から一個体繁殖する)の種類はインドのアッサム地方からチッタゴン高原(ミャンマー国境付近)辺りと考えられ、多胚性(一つの種から複数の個体が繁殖する)の種類はマレー半島辺りと考えられている。インドでは4000年以上前から栽培が始まっており、仏教の経典にもその名が見られる。現在では500以上の品種が栽培されている。インド・メキシコフィリピンタイオーストラリア台湾が主な生産国で、日本では沖縄県宮崎県鹿児島県和歌山県熊本県で主に栽培されている。

マンゴーの木は常緑高木で、樹高は40メートル以上に達する。開花と結実時期は地域により差がある。枝の先端に萌黄色の複総状花序を多数付ける。花は総状花序と呼ばれる小さな花が房状で咲く状態になり、開花後に強烈な腐敗臭を放つ。この腐敗臭により受粉を助けるクロバエ科などのハエを引寄せている。マンゴーの原産地の熱帯地域は、ミツバチにとって気温が高すぎるため、マンゴーは受粉昆虫としてハエを選んだと考えられている(日本のハウス栽培では受粉を助ける昆虫としてミツバチをビニールハウス内に飼っている)。果実は系統によって長さ3-25センチ、幅1.5-15センチと大きさに開きがあり、その形は広卵形とも勾玉形とも評される。果皮は緑色から黄色、桃紅色などと変異に富むが、果肉は黄色から橙紅色で多汁。果皮は強靱(きょうじん)でやや厚く、熟すと皮が容易に剥けるようになる。未熟果は非常に酸味が強いが、完熟すると濃厚な甘みを帯び、松脂に喩えられる独得の芳香を放つ。

マンゴーとかぶれ[編集]

マンゴーはウルシオールに似たマンゴールという接触性皮膚炎(かぶれ)の原因となる物質が含まれており、高率にかぶれを引き起こすため注意が必要である。痒みを伴う湿疹などのかぶれ症状は食べてから数日経って発症・悪化する場合があり、ヘルペスなどと誤診されることもある。

食材としての利用[編集]

マンゴー(生)100 gあたりの栄養価エネルギー 糖類食物繊維 飽和脂肪酸一価不飽和多価不飽和 トリプトファントレオニンイソロイシンロイシンリシンメチオニンフェニルアラニンチロシンバリンアルギニンヒスチジンアラニンアスパラギン酸グルタミン酸グリシンプロリンセリンビタミンビタミンA相当量 チアミン (B1)リボフラビン (B2)ナイアシン (B3)パントテン酸 (B5)ビタミンB6ビタミンB12コリンビタミンCビタミンDビタミンEビタミンKミネラルナトリウムカリウムカルシウムマグネシウムリン鉄分亜鉛マンガンセレン他の成分水分マイクログラム • mg = ミリグラム
  • IU = 国際単位
  • %はアメリカ合衆国における
    成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。
    出典: USDA栄養データベース(英語)

    熟した実を中心にある種に沿って切り、生のまま食用にするのが一般的だが、ジュースピューレ缶詰ドライフルーツなどにも加工される。香港では果肉またはピューレにゼラチン・砂糖・生クリームなど、ほかの材料を合わせたマンゴープリンが有名である。そのほか、ムースケーキシャーベットスムージーグミなどの洋生菓子も盛んに作られている。また、未熟果を塩漬け・甘酢漬け・チャツネにする。東南アジアでは未熟果に唐辛子入りの砂糖塩につけて食したり、炒め物などの料理に使用したりする。栄養面では、特にビタミンAやβ-カロテンが多い。

    地域によってはパパイヤのようにマンゴーの未熟果実を野菜として、おやつとして食する文化が一般的である。タイベトナムでは緑色の未熟果実が庶民のおやつとして食べられている。これには塩をつけて食べる。ほとんど甘みはなく、未熟な果実の鮮烈な酸味と歯ごたえを楽しむ。台湾では小ぶりのマンゴーの未熟果実を丸ごとシロップ漬けにしたおやつが食べられている。インドではマンゴーの未熟果実を乾燥させ粉末にしたものはアムチュール(en)と呼ばれ、酸味付けのスパイスとして使用される。ガラムマサラにアムチュールを加えた複合スパイスはチャットマサラ英語版と呼ばれ、インド料理では広く使用される。

    品種[編集]

    アップルマンゴー[編集]

    果皮が赤色の品種の総称で代表的品種はアーウィン種。日本での栽培の96.5%がこの品種である。シャープの副社長だった佐々木正が高校時代に品種改良で作ったとする説が広まっているが、これはリンゴにマンゴーを接木する研究をしていた話が間違って伝えられたと思われる。実際にはアーウィン種はアメリカ・フロリダ州において育種選抜されたもの。

    キーツマンゴー[編集]

    果皮が緑色の品種。アップルマンゴーより後の時期に出荷される。アップルマンゴーに比べ、一本の木に多く実がならず、熟する時期が確認しづらい上に大きくて買い手が少なく、流通量は少ない。

    ペリカンマンゴー[編集]

    日本で売られるペリカンマンゴーは主にフィリピン産である。正式な品種名は「カラバオ」である。外観は黄色く、他の品種と比べると酸味がやや強い。名前は実が扁平で、ペリカンのクチバシに形が似ていることに由来する。

    各国のマンゴー[編集]

    インド[編集]

    インドは世界最大のマンゴー生産国。年間収穫量は約160万トンで、世界各国に輸出する。4000年以上前から栽培が始まっており、現在では500以上の品種が栽培されている。マンゴーの王と呼ばれるアルフォンソ・マンゴーは、3月から5月にかけて実り始め7月頃に終わる。甘く特有の香りがある。雨期の数ヵ月前に数日間雨が降り、その雨により一気に熟する。この雨をマンゴー・レインと呼び、デカン高原では4月中旬から5月初旬に降る。雨期が始まる6月中旬で、アルフォンソ・マンゴーの季節は終わる。デーヴガル産のアルフォンソ・マンゴーが最高だと言われ、実が大きく味が濃い。2006年より条件付で日本への輸入が解禁された。現在輸入できる品種はアルフォンソ種・ケサー種・チョウサ種・バンガンパリ種・マリカ種・ラングラ種である。なおベンガル地方で古くからマンゴーの葉のみを食べさせた尿から黄色顔料インディアンイエローを製造していたが、牛が飢餓状態になるため動物虐待として1908年に取引が禁止された。

    日本[編集]

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    花切りにしたマンゴー

    日本では露地栽培により果実を実らせることが難しいため、農家ではビニールハウス栽培を採用している。ハウス栽培を行う目的は高い気温の確保ではなく、マンゴーの開花時期が日本の雨季と重なるため、水に弱いマンゴーの花粉を雨から守ることで受粉をさせ、結実させるためである[2]

    日本では植物防疫法によって、侵入を警戒する農業大害虫のミバエ類が発生している国・地域からのマンゴーの生果実の輸入は原則として禁止されている。しかし、輸出国において果実に寄生する対象ミバエ類の完全殺虫処理技術等が確立されれば、各国より申請された品種について日本側(農林水産省)が検討し、問題無いとの結論に至ったものは殺虫処理などの条件を付して日本への輸入が認可されるようになった。殺虫処理技術には飽和水蒸気による果実の加熱処理である蒸熱処理や温水に果実を漬ける温湯浸漬という工程が用いられることが多い。これら条件付き輸入解禁により、1990年代後半ごろから全国のスーパーなどの小売店でフィリピン産などのマンゴー果実が安価で売られ、また菓子などの加工物の原材料としても幅広く用いられるようになり、一気に代表的な熱帯産果物の一種として日本の社会に浸透した。

    日本では写真の花切りがマンゴーの切り方として定着している。切り方は中央の平たい種をさけ、魚を3枚におろすように包丁を入れ、切った面にさいの目状に切り目を入れる。そして両手で皮を押して果肉を反り返すと花のような形になる。

    タイ[編集]

    マンゴーはタイ語でマムアンといい、タイでの旬は4月から7月である[3]。もち米とともに調理したカオニャオマムアンはタイの名物料理である[3]

    タイでは60種類以上の品種が栽培されているが、条件付で日本への輸入が解禁されたのが1987年で、現在日本へ輸入できるマンゴーはナムドクマイ種・ナンカンワン種・ピムセンダン種・ラッド種・マハチャノ種の計5種類のみである。外国産のマンゴーではメキシコ、フィリピンについで3番目の輸入量である。

    日本人には糖度の高さと肌理細かな食感が特徴のナムドクマイ種が最も好まれ、日本に輸入されているタイ産マンゴーのほとんどを占めている。ナムドクマイとはタイ語で「花のしずく」という意味で、しずく状のマンゴーの形が名前の由来である。

    台湾[編集]

    台湾語で「ソァイアー」(檨仔)と呼ばれる。

    脚注[編集]

    [ヘルプ] Portal:果物 ポータル 果物
    1. ^ アソカノキ(無憂樹)、インドボダイジュ(インド菩提樹)、サラノキ(沙羅双樹)、マンゴーとエンジュを加えて「仏教五木」」
    2. ^ 所さんの目がテン番組HP マンゴー
    3. ^ a b JTB『るるぶ タイ・バンコク 2015年版』2014年、34頁

    関連項目[編集]

     src= ウィキメディア・コモンズには、マンゴーに関連するメディアおよびカテゴリがあります。  src= ウィキスピーシーズにマンゴーに関する情報があります。 ハーブ・香辛料
    ハーブ

    アサ · アンゼリカ · イノンド · イングリッシュラベンダー英語版 · エパソーテ · オレガノ · カレーリーフ · クルマバソウ英語版 · コショウソウ · コリアンダー (シアントロ) · シシリー · シソ · シソクサ英語版 · ジンブー英語版 · スイバ · セージ · セイボリー · タイバジリコ英語版 · タイホーリーバジル · タイム · タラゴン · チャービル · チャイブ · ドクダミ · ナギナタコウジュ · バジル · パセリ · ヒソップ · ピペルアウリツム英語版 · ベトナムコリアンダー英語版 · ヘンルーダ · ボリビアンコリアンダー英語版 · ボルド英語版 · マジョラム · ミツバ · ミント · メキシカンコリアンダー (ロングコリアンダー)英語版 · ルリジサ · レモンバーム · レモンバーベナ · レモンマートル · ローリエ · レモングラス · ローズマリー · ラベージ

    香辛料

    アサフェティダ · アジョワン · アナルダナ · アニス · アムチュール (マンゴーパウダー) · アリゲーターペッパー · アレッポペッパー · イノンド · ウコン · オールスパイス · カイエンペッパー · カシア · ガジュツ · カラシナ · カホクザンショウ · カルダモン · キャラウェイ · クスノキ · クミン · クラチャイ · クローブ · クロガラシ · 黒カルダモン · ケシノミ · コクム · コショウ · ゴマ · コリアンダー · サッサフラス · サフラン · サルサパリラ · · シトラスピール シナモン · シヌスモーレ · ジュニパーベリー · ショウガ · 小ガランガル · シロガラシ · スペインカンゾウ · セリムグレイン · セロリ · タスマニアペッパー · タマリンド · チャロリー · 陳皮 · 唐辛子 · トウシキミ · トンカ豆 · ナツメグ · ナンキョウソウ · ニオイクロタネソウ · ニンニク · バーベリー · ゴルパー · バニラ · パプリカ · パラダイスグレイン · バンウコン · ヒッチョウカ · ヒハツ · ヒハツモドキ · フェヌグリーク · フェンネル · ブラジリアンペッパー · ブラッククミン · ブラックライム · ホースラディッシュ · マウラブチェリー · マラバスラム · メース · ラドゥニ · リツェアクベバ · ローズ · ワサビ

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