線形動物(せんけいどうぶつ、学名:Nematoda、英名:Nematode, Roundworm)は、線形動物門に属する動物の総称である。線虫ともいう。かつてはハリガネムシなどの類線形動物 (Nematomorpha) も含んだが、現在は別の門とするのが一般的。また、日本では袋形動物門の一綱として腹毛動物・鰓曳動物・動吻動物などとまとめられていたこともあった。回虫・鞭虫などが含まれる。
大半の種は土壌や海洋中で非寄生性の生活を営んでいるが、同時に多くの寄生性線虫の存在が知られる。植物寄生線虫学 (nematology) では農作物に被害をもたらす線虫の、寄生虫学 (parasitology) ではヒトや脊椎動物に寄生する物の研究が行われている。
線形動物には、人間の寄生虫をはじめ、人間の生活に関わりの深いものも多く、それらの研究が進められる一方、自由生活のものの研究は後回しになりがちであった。しかし、自由生活のものの方がはるかに種数が多く、その研究が進むにつれ、種類数はどんどん増加しているので、どれくらいの種数があるかははっきりとは言えない状況である。その最大限の見積もりは、なんと1億種というものがある。これは、海底泥中での研究において、サンプル中の既知種の割合から算定されたものである。これが本当であれば、昆虫の種数を大きく抜き去り、地球上の生物種の大半は線形動物が占めていることになる。
土壌中の線形動物はその数も多く、生態的に重要な位置を占めていると思われる。細菌など微生物を食べているものと思われる。線虫を捕食するものには、昆虫などがあり、また、菌類には線虫寄生菌や、食虫植物のように線虫を捕獲する線虫捕食菌というものがある。
植物に寄生する物としては松枯れ病を引き起こすマツノザイセンチュウ(英語版)(マツクイムシ参照)[2]や、ダイズ生産上最も問題となるダイズシストセンチュウ(英語版)などがある。また農作物に及ぼす傷害の形態により、ネグサレセンチュウやネコブセンチュウとよばれる農業害虫のグループもある。これらは、薬剤散布のほかにマリーゴールドやエンバクなどのコンパニオンプランツを導入することで、減少させることが可能とされる。
ヒトには、カイチュウ(回虫)、ギョウチュウの他、カ(蚊)がベクターとなってリンパ系フィラリア症や象皮症の病原体であるマレー糸状虫、バンクロフト糸状虫が感染する。また魚介類を通して感染するアニサキスも線虫の1種。
特にカイチュウは戦前には日本人はほとんど全員に寄生していたほどに普通であった。しかし、現在ではほとんど見ることができない。これは、カイチュウの感染経路が遮断されたためである。卵が糞便とともに排出され、それが口にはいることで感染するので、現在のように、糞便の処理が行われ、また、畑に下肥が入らない環境では生活史が維持できない。他方、卵が手から手へと移るギョウチュウは、現在でも広く見られる。
2015年3月11日には、体長約1mmの線虫が、がん患者とそうでない人の尿のにおいを精度よく識別できたと九州大学などのチームによってアメリカの科学誌『プロスワン』に発表された。チームは、におい分子と結合するたんぱく質が犬とほぼ同数あり、飼育の簡単な線虫に着目。実験してみると、がん患者の尿のにおいを好んで近寄り、逆にがんではない人の尿は嫌って遠ざかることが分かった。健診で採取した242人の尿を使って調べると、がんと診断された24人のうち、線虫は23人の尿を選ぶことができた。[3]
線虫の一種である カエノラブディティス・エレガンス Caenorhabditis elegans(=C. elegans) は多細胞生物のモデル生物として盛んに研究が行われ、受精卵から成虫に至る全細胞の発生、分化の過程が細胞系譜として明らかになっている[2]。C. elegans 研究の創始者達3名は "Genetic regulation of organ development and programmed cell death" (器官発生とプログラム細胞死の遺伝的制御)で 2002年ノーベル生理学・医学賞を受賞している。
分子系統解析によって分類は大きく再編されており、以下の体系も暫定的なものである。
特に表記のない分類群は自由生活性である。
Meldal BH et al.(2007)によるリボソームDNAを用いた分子系統解析では、以下のような系統樹が得られている[4]
線形動物門ニセハリセンチュウ綱 Dorylaimea
エノプルス綱 Enoplea
クロマドラ目 Chromadorida
デスモドラ目 Desmodorida
モンヒステラ目 Monhysterida
イソレムス目 Isolaimida
アレオライムス目 Araeolaimida
桿線虫亜目 Rhabditina
旋尾線虫亜目 Spirurina
茎線虫亜目 Tylenchina
頭部の感覚器の形態から、2つの綱に分けられていた。
線形動物(せんけいどうぶつ、学名:Nematoda、英名:Nematode, Roundworm)は、線形動物門に属する動物の総称である。線虫ともいう。かつてはハリガネムシなどの類線形動物 (Nematomorpha) も含んだが、現在は別の門とするのが一般的。また、日本では袋形動物門の一綱として腹毛動物・鰓曳動物・動吻動物などとまとめられていたこともあった。回虫・鞭虫などが含まれる。
大半の種は土壌や海洋中で非寄生性の生活を営んでいるが、同時に多くの寄生性線虫の存在が知られる。植物寄生線虫学 (nematology) では農作物に被害をもたらす線虫の、寄生虫学 (parasitology) ではヒトや脊椎動物に寄生する物の研究が行われている。