ニンニク(蒜、大蒜、葫、忍辱[4]、学名:Allium sativum)はヒガンバナ科ネギ属の多年草で、球根(鱗茎)を香辛料として用いる。かつてクロンキスト体系による分類ではユリ科に属していた。
日本ではニンニクやノビル(野蒜)など鱗茎を食用とする臭いの強い(ネギ属の)植物を総称して蒜(ひる)と呼んでいたが、特にノビルと区別する場合にはオオヒル(大蒜)とも称した。生薬名は大蒜(たいさん)。語源は困難を耐え忍ぶという意味の仏教用語の「忍辱」とされる。
5月頃に白い小さな花を咲かせるが、栽培時には鱗茎を太らせるために花芽は摘み取る。摘み取った茎は柔らかい物であれば野菜として利用される。
一般的に見かけるニンニクは分球ニンニクがほとんどであるが、一片種と呼ばれる中国のプチニンニクなどの品種もある。
ジャンボニンニクあるいは無臭ニンニクと呼ばれるものはニンニクとは別種であり、リーキ(ポロネギ)の1変種である。
原産地は中央アジアと推定されるが、すでに紀元前3200年頃には古代エジプトなどで栽培・利用されていた。また、現存する最古の医学書『エーベルス・パピルス』には薬としても記載されている。中国には紀元前140年頃伝わり、日本には中国を経て8世紀頃には伝わっていたと見られる[5]。
日本では禅宗で「不許葷酒入山門」とされたように、強壮作用が煩悩(淫欲)を増長するとされて仏教の僧侶の間ではニラ、ネギ等とともに五辛の1つとして食が禁じられた。漢字表記の「蒜」「大蒜」は漢語に由来する一方、仏教用語の「忍辱(にんにく)」がニンニクの語源となったとされる[5]。『大和本草』巻之五 草之一 菜蔬類では、悪臭甚だしくとも効能が多いので人家に欠くべからざるものと評価された。
中国が世界のニンニク生産量の8割を占めている。
日本国内の流通においては、国産ニンニクの80%を青森県産が占め(市町村別では、十和田市[6]が最も多く生産している)、次いで香川県の出荷が多い。青森県田子町[7]は早くからブランド化に取組んだ。
暖地の場合、秋に鱗片を畑地に軽く植え付け、翌年の梅雨に入る前に収穫する。ニンニクの栽培は比較的簡単なことから、畑作のほか、家庭菜園やアパート・マンションのベランダでのプランター菜園でも栽培できる。
肉の臭みを消し、料理に食欲をそそる香味を付与する。香味野菜の代名詞的存在であり、中国料理、韓国料理、イタリア料理、フランス料理など、さまざまな料理に用いられる。
中華料理・イタリア料理などでは、調理油でまず最初にニンニクのみじん切りを炒め、油に香りを移す調理法が多用される。油が冷たいうちにニンニクを入れ、弱火で炒めるのがコツである。火を強くするとすぐに黒く焦げて、苦く、又焦げ臭くなる。
中華料理では、球根のみならず葉(葉ニンニク)や茎(いわゆる「ニンニクの芽」)も香味野菜として利用される。皮をむいたニンニクの球根を乾燥させ、粉末状にした「ガーリックパウダー」もある。乾燥させることで生よりも臭気を抑えられることもあり、ガーリックトーストをはじめとする各種料理に用いられている。ガーリックパウダーは吸湿性が高く、開封後は乾燥状態を保持できる環境で保管する必要がある。逆に、わざと少量の水分を加えておろしニンニク代わりに使う例もある。
日本では餃子の具として多く使用される。また香辛料として焼肉などのタレに使用する事も多い。ラーメンの具や香辛料としてもポピュラーであるほか、皮付きのまま丸ごと揚げたり焼いたりして提供されることもある。高知県の一部地域では葉ニンニクも使われている。
ニンニクの球根を摺り下ろしたり酢漬けにしたりすると、乳白色から緑色に変色する場合がある[8]。この変色はニンニクに含まれるアリインと、低温(3℃)貯蔵中に生成されるイソアリインとが反応した場合に起こる[9]。ニンニクは気温が下がると発芽準備に伴いイソアリインを蓄積するため、特に冬から春にかけて収穫されたニンニクは緑変しやすい。逆に25℃以上の環境ではイソアリインがシクロアリインへと代謝されるため、夏季に収穫されたものはこの反応を起こしにくい[10]。緑変したものを食べても人体には影響は無い。なお一度緑変したニンニクは、1ヶ月ほど放置すると緑色が目立たなくなる。
糖質の分解を促す(ビタミンB1の効果を高める)アリシンも含む。実験室レベルでは各種の薬理作用等が報告されており栄養ドリンクや健康食品にも使われているが、ヒトでの有効性について信頼できるデータは十分でない。ビタミンB6の含有量が全食品の中で非常に多い部類に入る[11]。
ビタミンB1を豊富に含む豚肉はニンニクと一緒に食べるとビタミンB1が吸収されやすくなると言われている。ニンニク、ビタミンB1、関連製剤について次のような歴史が存在する。1952年(昭和27年)3月8日に京都大学衛生学の藤原元典は、武田薬品工業研究部と提携してニンニクとビタミンB1が反応するとニンニクの成分アリシンがB1(チアミン)に作用して「アリチアミン」ができると報告した。そのアリチアミンは、体内でB1にもどり、さらに腸管からの吸収がきわめてよく、血中B1濃度の上昇が顕著で長時間つづく、という従来のビタミンB1製剤にはない特性があることを報告した。また、武田薬品工業は、アリチアミンの製剤化に力を入れ(製品開発のきっかけは、旧陸軍から脚気の治療薬開発を依頼されたこと)、1954年(昭和29年)3月、アリチアミンの誘導体であるプロスルチアミンの内服薬「アリナミン錠」が発売され、従来のビタミンB1剤に見られない優れた効果を示した[12]。
上記のようにアリシンはビタミンB1の吸収・保持を高め、加えてニンニクの無臭のスコルジニンには、強力な酸化還元作用があり、民間伝承では体組織を若返らせ、新陳代謝を盛んにし、疲労回復に役立ち、強壮・強精作用を有するとされる。この反面、強壮・強精作用と臭いがインド起源の仏教界で「煩悩をかきたて修行の妨げになる」として「葷酒(くんしゅ)山門に入るを許さず」のように忌み嫌われた[13]。
初期調査では、ニンニクの摂取が、いくつかの癌、特に消化器管系の癌のリスクを減少させる可能性が示唆されている[14]。これらの研究は、さまざまな種類と量のニンニクで調査されている。ただし、仮にニンニクの摂取が一部の癌の発生を減少させているとしても、それ以外の癌のリスクがどの程度残っているかは分かっていないものの、このようにアメリカ国立癌研究所はホームページのファクトシートで明らかにしている[15]。
ニンニクは、結腸癌、直腸癌の予防の観点でリスク低下がほぼ確実とされている[16]。
ニンニクは、デザイナーフーズ計画で最も癌予防効果が高い食材であると位置づけられていた[17]。
ニンニクの持つO157菌等の腸管出血性大腸菌に対する殺菌力は、試験管やシャーレを使った実験、動物実験などでの実証が論文発表されている。1%のニンニク粉末水をマウスに経口投与した際に腸管内の生菌数の減少が報告されている。このことは、ニンニクの摂取が消化器系の感染予防に寄与できることを示唆している[18]。
ニンニクのある種の細胞には、アリインという無臭の化合物が含まれる。一方、ニンニクの別の細胞にはアリナーゼ(またはアリイナーゼ)という酵素が含まれる。ニンニクを切るとこれら細胞が壊れ、アリナーゼとアリインは細胞外に出てお互いに接触する。アリナーゼの作用によりアリインはアリシンに変化する。そのアリシンがニンニクの独特な臭いのもとである。アリシンは抗菌作用がある。
エジプト産のニンニクを品種改良をして、臭いが少ないと宣伝されている「無臭ニンニク」も流通しているが、ニンニク臭は口内に残った食べカスからだけではなく、体内に取り込まれて体臭の原因となる[19]。またニンニクとは別種のリーキ (ポロネギ) の球根を「無臭ニンニク」として販売している場合もある[20]。 また、デカフェと同様に高圧の二酸化炭素による超臨界流体でニンニクの臭気成分を抽出する方法も使用される[21]。
ニンニクは強い悪臭(口臭・体臭)の原因となる。
個体によるが、赤血球を破壊する事により、血尿、血便、急性貧血の原因になる。[要出典]
生のニンニクの強烈な香りと辛味は、刺激が強過ぎて胃壁などを痛める場合がある[22]。
ニンニクの過剰な摂取は胃腸障害を含めた副作用を起こしうる[15]。
ニンニクにまつわる伝承は世界各地に伝えられている。独特の香気は香辛料として用いられるほか、魔除けとしても用いられてきた。
日本では日本記念日協会が鹿児島県の健康食品メーカーの申請を認可し、2月29日を「にん(2)に(2)く(9)の日」として登録した。4年に1度だけの記念日で、日本各地でにんにくに関するイベントが催される[23]。
アサ · アンゼリカ · イノンド · イングリッシュラベンダー(英語版) · エパソーテ · オレガノ · カレーリーフ · クルマバソウ(英語版) · コショウソウ · コリアンダー (シアントロ) · シシリー · シソ · シソクサ(英語版) · ジンブー(英語版) · スイバ · セージ · セイボリー · タイバジリコ(英語版) · タイホーリーバジル · タイム · タラゴン · チャービル · チャイブ · ドクダミ · ナギナタコウジュ · バジル · パセリ · ヒソップ · ピペルアウリツム(英語版) · ベトナムコリアンダー(英語版) · ヘンルーダ · ボリビアンコリアンダー(英語版) · ボルド(英語版) · マジョラム · ミツバ · ミント · メキシカンコリアンダー (ロングコリアンダー)(英語版) · ルリジサ · レモンバーム · レモンバーベナ · レモンマートル · ローリエ · レモングラス · ローズマリー · ラベージ
アサフェティダ · アジョワン · アナルダナ · アニス · アムチュール (マンゴーパウダー) · アリゲーターペッパー · アレッポペッパー · イノンド · ウコン · オールスパイス · カイエンペッパー · カシア · ガジュツ · カラシナ · カホクザンショウ · カルダモン · キャラウェイ · クスノキ · クミン · クラチャイ · クローブ · クロガラシ · 黒カルダモン · ケシノミ · コクム · コショウ · ゴマ · コリアンダー · サッサフラス · サフラン · サルサパリラ · 塩 · シトラスピール シナモン · シヌスモーレ · ジュニパーベリー · ショウガ · 小ガランガル · シロガラシ · スペインカンゾウ · セリムグレイン · セロリ · タスマニアペッパー · タマリンド · チャロリー · 陳皮 · 唐辛子 · トウシキミ · トンカ豆 · ナツメグ · ナンキョウソウ · ニオイクロタネソウ · ニンニク · バーベリー · ゴルパー · バニラ · パプリカ · パラダイスグレイン · バンウコン · ヒッチョウカ · ヒハツ · ヒハツモドキ · フェヌグリーク · フェンネル · ブラジリアンペッパー · ブラッククミン · ブラックライム · ホースラディッシュ · マウラブチェリー · マラバスラム · メース · ラドゥニ · リツェアクベバ · ローズ · ワサビ
アドジカ · アドヴィエ · エルブ・ド・プロヴァンス · オールドベイシーズニング · カーメリスネリ · ガーリックソルト · ガラムマサラ · カレー粉 · キャトルエピス · クラブボイル · 五香粉 · ザーター · シーズンドソルト · 七味唐辛子 · ジャークスパイス · セイボリー · タビル · タンドリーマサラ · チャートマサラ · チャウンク · チュニジアンファイブスパイス · チリパウダー · バハラット · ハリッサ · バルバレ · ハワイジ · パンチフォロン · ファインハーブ · ブーケガルニ · ブクヌ · ペルシャード · マサラ · ミックススパイス · ミトミタ · レモンペッパー · パンプキンパイスパイス · レカードロジョ
ニンニク(蒜、大蒜、葫、忍辱、学名:Allium sativum)はヒガンバナ科ネギ属の多年草で、球根(鱗茎)を香辛料として用いる。かつてクロンキスト体系による分類ではユリ科に属していた。
日本ではニンニクやノビル(野蒜)など鱗茎を食用とする臭いの強い(ネギ属の)植物を総称して蒜(ひる)と呼んでいたが、特にノビルと区別する場合にはオオヒル(大蒜)とも称した。生薬名は大蒜(たいさん)。語源は困難を耐え忍ぶという意味の仏教用語の「忍辱」とされる。
5月頃に白い小さな花を咲かせるが、栽培時には鱗茎を太らせるために花芽は摘み取る。摘み取った茎は柔らかい物であれば野菜として利用される。
一般的に見かけるニンニクは分球ニンニクがほとんどであるが、一片種と呼ばれる中国のプチニンニクなどの品種もある。