ジュンサイ(蓴菜、Brasenia schreberi)は、ハゴロモモ科(別名ジュンサイ科。またスイレン科に含めることもある)に属する、多年生の水生植物である[1]。本種のみでジュンサイ属を構成する。なお、蓴菜の字は難解であるため、純菜や順才の字があてられることもある。
スイレンなどと同じように葉を水面に浮かべる水草である[1]。澄んだ淡水の池に自生する。若芽の部分を食用にするため、栽培されている場合もある[1]。
東南アジア - インド、アフリカ、オーストラリア、アメリカ等に世界に広く分布する。日本では北海道 - 九州及び南西諸島(種子島・沖縄島に分布するが、すでに絶滅した地域もある。 多年生の浮葉植物。葉は互生、楕円形で、長さ5 - 12mm、裏面は紫色。葉柄は裏側の真ん中に着く盾形であり、ハスの葉と同じ付き方である。地下茎は水底の泥の中にあるが、そこから葉柄をのばすのではなく、茎が伸びて水面近くまで達する。秋に地下茎の一部は、養分を貯蔵して越冬用の殖芽となる。この茎からまばらに葉柄をのばし、その先に葉をつける。茎の先端の芽の部分や若葉の裏面は寒天質の粘液で厚く覆われ、ムチンによるぬめりがある。花期は6 - 8月。花は茎から水面に伸びた柄の先につき、直径1 - 1.6cm。花弁・がく片は3枚ずつで、スイレンの花を細くしたような姿だが、花弁は紫褐色であまり目立たない。
ジュンサイは世界に広く分布している植物だが、食用にしているのは中国と日本くらいである[2]。
ガラクトマンナンの[1]ゼリー状の膜で覆われた若芽は[3]日本料理で食材として珍重される[1]。
ジュンサイは秋田県三種町は国内生産量の約90%を占める日本一の産地であり[3][4]、1986年(昭和61年)度で約270トンだった生産量は[1]、町が転作作物として1987年(昭和62年)から3年かけて奨励事業を行ったことにより急速に増え[1]、最盛期となった1991年(平成3年)度には約1260トンに達した[1]。 しかし、その後は減少傾向に転じており、2016年(平成28年)度は約440トンへ大きく落ち込んでいる[1]。
同県の郷土料理とされ、主な用途として、次のような料理に用いられる。
また、北海道七飯町にある大沼国定公園には、大沼三湖のひとつである蓴菜沼があり、ジュンサイの瓶詰は大沼国定公園の名物として売られている。
なお、私有地の池で栽培されることが多いため、採集に当たっては確認が必要。
『万葉集』に「ぬなは(沼縄)」として歌に詠まれている。
近畿方言には「じゅんさい」という方言がある。捉えどころが無い、転じて、どっちつかず、でたらめ、いい加減という意味でその言葉は使われる[5]。ジュンサイはぬめりがあって箸で掴みにくいことからこの方言が生まれた[5]。
生育地である下記の地方公共団体が作成したレッドデータブックに掲載されている。日本全体としては普通種であるが、地域によっては絶滅のおそれが高く、既に絶滅した地域もある。絶滅・減少の要因としては、池沼の開発や水質の悪化等があげられる。