ヒメツバメウオ科(学名:Monodactylidae)は、スズキ目スズキ亜目に所属する魚類の分類群(科)の一つ。ヒメツバメウオなど、主に沿岸から汽水域にかけて生息する底生魚を中心に、2属6種が含まれる[1]。科名(模式属名)の由来は、ギリシア語の「monos(単一の)」と「daktylos(指)」から[2]。
ヒメツバメウオ科は西部太平洋からインド洋、アフリカ大陸西部にかけての温暖な海に分布する[1]。2属6種からなる小さなグループで、日本では南西諸島の沿岸にヒメツバメウオ属の1種(ヒメツバメウオ Monodactylus argenteus)が生息するのみである[3][4][5]。Schuettea 属の2種は、オーストラリア南東部の沿岸および汽水域に固有である[1]。
ヒメツバメウオ類は主に沿岸の浅い海で生活するが、河口などの汽水域にも進出し、しばしば大きな群れを形成する[1][2]。さらにヒメツバメウオ属の仲間は、ときおり河川を遡上して、純粋な淡水域で生息することが知られている[1]。食性は肉食性で、小魚や無脊椎動物を捕食する[2]。
本科魚類は観賞魚としても利用される[1]。淡水・海水のいずれにも適応できる飼育の容易さから、水族館だけでなく個人のアクアリウム用としても人気がある[2][3]。
著しく側扁した、左右に平べったい体型をもつ[1]。体色は銀色を基調とし、最大で全長30cmほどに成長する[2]。体高は高く、一部の種では体長を上回る[1]。
背鰭は1つで、基底は長く鱗に覆われ、5-8本の短い棘条をもつ[1]。臀鰭の基底も長く、棘条は3本[1]。背鰭と臀鰭は体の後半で向かい合うように位置し、軟条部はほぼ上下対称に伸長する[3]。
ヒメツバメウオ属は稚魚の時点では腹鰭をもつが、成魚では消失あるいは痕跡的となる[1]。一方、Schuettea 属は成魚も腹鰭をもつ[1]。ヒメツバメウオ属の鱗は櫛鱗であることが多いが、Schuettea 属は円鱗であり、また後者は外翼状骨および内翼状骨の歯を欠くなど、両属には形態学的な相違点が多い[1]。このため、Schuettea 属を独立の科として扱う見解もあるが、現在は暫定的にこの位置に置かれている[1]。
ヒメツバメウオ科にはNelson(2016)の体系において2属6種が認められている[1]。