キュウリ(胡瓜、Cucumis sativus L.)とはウリ科キュウリ属のつる性一年草、およびその果実のことである。かつては熟した実を食用とした事もあったが、甘みが薄いためにあまり好まれず、現在では未熟な実を食用とするようになった。インド北部、ヒマラヤ山麓原産。日本では平安時代から栽培される。胡瓜の「胡」という字は、シルクロードを渡って来たことを意味している。
「キュウリ」の呼称は、漢字で「木瓜」または「黄瓜」(きうり、現代中国語でも「黄瓜」)と書いていたことに由来する。上記の通り現代では未熟な実を食べる事からあまり知られていないが、熟した実は黄色くなる。今と異なり古い時代はこれを食べていた。尚、現代では「木瓜」はパパイアを指す。
温暖な気候を好むつる性の植物である。栽培されているキュウリのうち、3分の2は生で食することができる。種子は暗発芽種子である。雌雄異花ではあるが、単為結果を行うため雄花が咲かなくとも結実する。
主に黄色く甘い香りのする花を咲かせるが、生育ステージや品種、温度条件により雄花と雌花の比率が異なる。概ね、雄花と雌花がそれぞれ対になる形で花を咲かせてゆく。葉は鋸歯状で大きく、果実を直射日光から防御する日よけとしての役割を持つ。長い円形の果実は生長が非常に早く、50cmにまで達する事もある。熟すと苦味が出るため、その前に収穫して食べる。
日本では収穫作業が一日に2-3回行われる(これには、日本市場のキュウリの規格が小果であることも影響している)。夏は露地栽培、秋から初春にかけては、ハウスでの栽培がメインとなり、気温によっては暖房を入れて栽培することもある。しかし、2003年から2008年の原油価格の高騰により、暖房をかけてまでの栽培を見送る農家も少なくなかった。
果実色は濃緑が一般的だが、淡緑や白のものもある。根の酸素要求量が大きく、過湿により土壌の気相が小さい等、悪条件下では根が土壌上部に集中する。生産高は2004年、2005年は群馬県が第一位であったが、2006年からは宮崎県が第一位である。
キュウリは古くから食用の野菜として栽培されている。果実成分の95%程度が水分とされ栄養価は非常に低いが、歯ごたえのある食感とすっきりとした味わいがある。水分を多く含むことから暑い地方では水分補給用として重用されてきた。
紀元前4000年前にメソポタミアで盛んに栽培されており、インド、ギリシア、エジプトなどでも栽培された。その後、6世紀に中国、9世紀にフランス、14世紀にイングランド、16世紀にドイツと伝播していった。アメリカには15世紀末コロンブスがハイチに持ちこんだのを端緒に普及していった。キュウリを好物とした歴史上の有名人としてローマ皇帝ティベリウスがいる。
中国ではかつて、ビルマ経由で伝来した水分の少ない南伝種が普及し、シルクロード経由の瑞々しい北伝種の伝来まで、この南伝種を完熟させてから食べるのが一般的であった。のちに南伝種は漬物や酢の物に、北伝種は生食に使い分けられることになる[3]。南伝種の伝来後、日本でも江戸時代までは主に完熟させてから食べていたため、黄瓜と呼ばれるようになった。日本では1500年ほどの栽培の歴史を持つが、完熟した後のキュウリは苦味が強くなり、徳川光圀は「毒多くして能無し。植えるべからず。食べるべからず」、貝原益軒は「これ瓜類の下品なり。味良からず、かつ小毒あり」と、はっきり不味いと書いているように、江戸時代末期まで人気がある野菜ではなかった。これには、戦国期の医学者曲直瀬道三の『宣禁本草』などに書かれたキュウリの有毒性に関する記述の影響があると見られている。安土桃山時代以前にはキュウリに禁忌は存在せず、平安後期の往来物『新猿楽記』に登場する美食趣味の婦人「七の御許」が列挙した好物の一つに「胡瓜黄」が入っており、イエズス会宣教師のルイス・フロイスは著書『日欧文化比較』(1585)で「日本人はすべての果物は未熟のまま食べ、胡瓜だけはすっかり黄色になった、熟したものを食べる」と分析している[4]。幕末、キュウリの産地だった砂村(現在の江東区)で、キュウリの品種改良が行われ、成長が早く、歯ごたえがよく、味も良いキュウリが出来て一気に人気となった[5]。
ツルを支柱にしっかり固定し這わせる方法と、地面を這わせる栽培法がある。ともに10度以下の低温には弱く、また25度以上の高温にも弱い。ウリ科の植物同士の連作にも弱い。最低でも3年をあけ植えるか接ぎ木苗を使用。根が浅いため乾燥に弱く、高温乾燥が続くとあっという間にうどん粉病などの病気にかかり枯れる。種まきの時期をずらしながら栽培することによって秋まで収穫出来る。
ミナミキイロアザミウマの媒介するウイルスで「キュウリ黄化えそ病」にかかり株が枯れ収量が減る被害が報告されているが[6]、岐阜県農業技術センターにより赤色の防虫ネットを導入した予防策の研究開発が進められている[6]。
非常に種類が多く、世界中で500もの品種が栽培されている。現在、商業目的で栽培される品種の多くはF1(えふわん)と呼ばれる一代雑種品種である。分類方は幾つかあるが、果実の性質によれば白イボ系と黒イボ系に大別される。
その他の品種
その他にピクルス用の品種もある。
日本での経済栽培はネットに伝わせるか紐で吊り下げて行われるので、蔓が自然に上に向かって伸びる品種が使われる。蔓が上に向かって伸びない品種は頻繁に誘引するか、ネットを使わずに「地這い栽培」する。家庭菜園では省力栽培できる地這い品種が使われる事も多い。
親蔓の各節に雌花が付くタイプを「節成り」または「親蔓タイプ」などとよぶ。親蔓には殆ど付かず子蔓や孫蔓に多く雌花が付く品種を「子蔓・孫蔓タイプ」などとよぶ。また、この中間型のものは「飛び節」とよぶ。ただし、着果習性は少数の遺伝子で決まるわけではなく日長・気温・日照・肥料・株の老若などの影響も受ける。一般には短日・低温で節成り性が強くなる。
華南型・華北型・イギリス温室型(高温に弱い)・スライスキュウリ型・ピクルス型など主に5系統に分類される。
生のまま味噌やもろみをつけて齧ったり、サラダ、寿司(かっぱ巻き)、酢の物、和え物、塩揉みなどで供されるほか、かっぱ漬け、奈良漬け、醤油漬け、わさび漬け、ピクルス、オイキムチなどの漬物の材料として使われる。日本の料理で加熱調理されることは少ない[8]が、中華では煮物や炒め物としても利用される。トルコ料理のシャジュク、スペイン料理のガスパチョなど、スープにして食することも多い。
キュウリの調理の際には、表面を滑らかにして色を鮮やかにするため、塩を振ったまな板の上で転がすようにして塩を擦りこむ板摺り(いたずり)と呼ばれる調理法が用いられることも多い。
最近では、キュウリの表面に出るブルーム(白い物質)が、農薬と紛らわしいという理由で嫌がられ、ブルームレスキュウリが多く作られている。ブルームの無いブルームレスキュウリは通常のキュウリと比べ皮が固い。そもそもこのブルームは、キュウリの水分が蒸発するのを防ぐ物質だが、ブルームレスキュウリは通常のキュウリより味が落ちると考える人も多い。ブルームレスキュウリは専用に育種したカボチャを台木として、接ぎ木することによって作成できる。
採れたばかりのキュウリには薔薇のとげのようなイボがあり、素手で触ると痛い。このイボは鮮度が失われるにつれて硬さを失っていくため、この性質をキュウリの鮮度を見分けるための目安にすることもできる。イボの部分に雑菌などが付く恐れがあるため、近年ではイボの無い品種も開発されている。
まだ実が小さいうちに収穫したものを「もろきゅう」(「もろみキュウリ」を略した言葉でもある)といい主に生で食べる。さらに未熟で花の付いた物は「花丸キュウリ」と呼ぶ。ただし、地域によって呼び方や規格が異なることがある。品種改良によって苦味を取り除いたキュウリも登場している。
キュウリは全体の90%以上が水分で、ビタミンC、カロチン、カリウムなどの栄養素が含まれているが、含有量は非常に低い。
またキュウリにはビタミンCを酸化させる酵素(アスコルビナーゼ)が含まれているため、キュウリを食べるとビタミンCが破壊されると言われているが、実際は酵素作用によって還元型ビタミンCから酸化型ビタミンCに変異されるだけである。
一方で、酸化型に変わったビタミンCでも体内で還元型に戻るという可逆的性質を持っているため、今日では生理作用も還元型と同等であるとされている。
キュウリを食することでビタミンCが破壊されると言われた理由として、過去にはビタミンCは還元型だけに生理作用があると考えられており、酵素によって酸化型に変化したビタミンCには生理作用はないものと考えられていたことがあげられる。
そのため酸化型ビタミンCはビタミンCとしてカウントされておらず、ビタミンC量が減少したように見えたという背景がある。しかしながら前述の通り、酸化型ビタミンCであっても体内で還元型に戻るため現在では還元型と酸化型を合わせた総ビタミンC量を記述することが一般的である。
かつて、キュウリはデザイナーフーズ計画のピラミッドで3群に属しており、3群の中でも、ハッカ、オレガノ、タイム、アサツキと共に3群の中位に属するが、癌予防効果のある食材であると位置づけられていた[9]。
みじん切りにしたキュウリを顔の上にのせるパックのこと。ビタミンCによるコラーゲン形成作用により肌を引き締める効果があり人気は高いが[要出典]、キュウリはソラレン(英語版)(psoralen)を含みメラニンが光に反応しやすくなる性質も持ち合わせている[13][出典無効]。
キュウリ(胡瓜、Cucumis sativus L.)とはウリ科キュウリ属のつる性一年草、およびその果実のことである。かつては熟した実を食用とした事もあったが、甘みが薄いためにあまり好まれず、現在では未熟な実を食用とするようになった。インド北部、ヒマラヤ山麓原産。日本では平安時代から栽培される。胡瓜の「胡」という字は、シルクロードを渡って来たことを意味している。
「キュウリ」の呼称は、漢字で「木瓜」または「黄瓜」(きうり、現代中国語でも「黄瓜」)と書いていたことに由来する。上記の通り現代では未熟な実を食べる事からあまり知られていないが、熟した実は黄色くなる。今と異なり古い時代はこれを食べていた。尚、現代では「木瓜」はパパイアを指す。