シロバナヨウシュチョウセンアサガオ(白花洋種朝鮮朝顔、学名Datura stramonium、英名jimson weed, devil's trumpet, thorn apple, tolguacha, datura など[1])は世界の温帯から熱帯に分布するナス科の一年草である[2]。
属名は古いヒンドゥーの言葉で「植物」を表すdhaturaに由来する。種小名stramoniumはこの種のギリシャ語名を付けたものであり、「ナス科」を表すstrychnos (στρύχνος) と、「怒り」を表すmaniakos (μανιακός) に由来する[2][3]。シロバナヨウシュチョウセンアサガオは他のチョウセンアサガオ属Daturaと同様にアルカロイド類を多く含み、薬用植物として用いられる[2][4][5]。特に葉や種は幻覚剤として使用されることがあり、知識不足による過剰摂取で病院に搬送される人や、死亡する人もいる[要出典]。
高さ1-1.5メートル程の茂みを形成する、直生胚珠の一年草[6]。葉は柔らかく、長さは20センチメートルほどで不規則なぎざぎざがある[5]。茎と葉面は無毛。茎が緑色のものと暗紫色を帯びるものがある。夏から秋にかけて、香りのある6.5〜9センチメートル長のトランペット状の花をつける。花の色は白からクリーム色またはスミレ色。花が完全に開花することは稀である。果実は卵型で鋭い棘に覆われている。成熟した果実はクルミ程の大きさで4室に分かれていて、中に多くの黒い種子が入っている[2][3]。
花が白色のものをシロバナヨウシュチョウセンアサガオ、花がスミレ色で茎が暗紫色のものをヨウシュチョウセンアサガオ (ムラサキチョウセンアサガオ) Datura stramonium var. tatula; Datura tatula、果実に刺のないものをハリナシチョウセンアサガオDatura stramonium var. inermis (Juss. ex Jacq.) Schinz & Thell. として区別することがある[2][7]。
シロバナヨウシュチョウセンアサガオの元々の生息範囲は詳しくわかっていない。最初に分類し、学名を付けたのはスウェーデンの生物学者カール・フォン・リンネであるが、それ以前にもニコラス・カルペパーなどの植物学者による研究がなされていた[8]。
現在、本種は世界各地の温暖で穏やかな気候の地域において野生化しており、道端、農地、牧草地、芝地、肥料の山など至る所に自生している。ヨーロッパでは荒地やゴミ捨て場の雑草としてよく見られる[9]。種は鳥に運ばれたり、落下によって伝播すると考えられている。果実の開裂により1〜3メートルの範囲に種子が撒き散らされる。日本には明治初期に渡来し、現在は各地で野生化している[2][10]。
シロバナヨウシュチョウセンアサガオは、その全部位に毒性が有り、人間や家畜、ペットなどを含む動物が摂取すると命に関わる恐れがある。地域によっては栽培や売買が禁止されている。また、この種が自分の庭に生えているのを発見した時は、取り除く事が推奨されることがある[9][10]。活性成分はトロパンアルカロイドのアトロピン、スコポラミン、ヒヨスチアミンであり、これらはせん妄発生物質 (英語版) deliriant、抗コリン薬に分類される。気晴らしの為に不用意に摂取し、中毒状態になり、多くの場合入院したり、場合によっては死亡することがある[11]。典型的な中毒症状は、せん妄、異常高熱、頻脈、異常な(場合によって暴力的な)行動、散瞳とそれに伴う羞明である。これらの症状が数日間続く。顕著な健忘もよく報告されている[12]。過剰摂取、中毒の解毒剤としてフィゾスチグミンが選択されている[13]。
誤ってシロバナヨウシュチョウセンアサガオをシチューに入れて食べてしまったため、家族6人が入院するという中毒事故が、米疾病対策センターによって報告されている[14]。
シロバナヨウシュチョウセンアサガオの原産地候補である南アジアと北アメリカでは、宗教的な行事に用いられることがあった。ヒンドゥー教のシヴァ神はダチュラの煙を吸うことで知られ、現在でも祭典や記念日には、その緑色の小さな果実がシヴァ寺院に納められる。シヴァラトリなどの祝祭では、ヒンズー教の平信徒は神への祈りに際してダチュラの煙ではなくマリファナの煙を使用する。ダチュラの煙を吸うことでどんな症状が表れるかは予測できず、致命的な結果になることもあり得る。またアルゴンキンやルイセーニョなどの北アメリカ先住民も本種を宗教的な儀式に用いる[15]。
本種はアメリカ合衆国ではjimson weed (稀にjamestown weedとも) と呼ばれる。これらの呼称はバージニア州ジェームズタウンに由来する。1676年に起こったベイコンの反乱を鎮圧する為に、ジェームズタウンにイギリス軍人達が派遣された。そこで彼らはシロバナヨウシュチョウセンアサガオを毒草と知らずに食べ、中毒症状を起こしてしまった。彼らは摂取後およそ11日間、異常な精神状態になった。
ジェームズタウン・ウィード(私がそう呼んでいるアップルオブペルー(Nicandra)に似た植物)は世界でも有数の寒性の薬草であるように思われる。ベイコンの反乱 (1676) を鎮圧するために送られてきた兵士達はJames-Town Weedの若芽を集め、煮てサラダにして食べた。彼らの何人かはかなりの量を食べており、それから数日間は生まれついての馬鹿者のように変わってしまった。その異変はとても愉快な喜劇のようであった。ある兵士は宙に舞う羽をひたすら吹き上げ続け、もう一人の兵士はその兵士に向かって激怒しながら麦わらを投げ続けた。さらに別の兵士は全裸になり隅っこで猿のように座って、彼らに向かってしかめっ面をしたり歯を剥き出しにした。四人目の兵士は同僚達に向かってキスをしてまわった。また、べたべたと触りまくり、その顔の前で、どんなオランダ道化師よりも滑稽な表情で嘲笑したりした。その狂気じみた様子から、彼らがその愚行によって自らを傷つけたりしないように監禁されることになった。しかし、彼らの行動は非常に無垢で、快活であるように見られた。ただ彼らは非常に不潔で、止められない限り糞便の上で転げまわったりした。このような悪ふざけを数えきれないほど行った後、11日後に彼らは正気を取り戻したが、その間の記憶は全く無かった。
– The History and Present State of Virginia, 1705[16]
シロバナヨウシュチョウセンアサガオは、イギリスでは悪名を得ている。マスコミがサフォーク州に自生していた本種をハリー・ポッターシリーズに登場する架空の植物デビルズスネアであると言った、2009年の夏枯れ時に書かれた記事のせいである[10][17][18][19] [20][21]。
この記事にはアメリカ合衆国内で著作権が消滅した次の百科事典本文を含む: Chisholm, Hugh, ed. (1911). "要記事名". Encyclopædia Britannica (英語) (11th ed.). Cambridge University Press.
シロバナヨウシュチョウセンアサガオ(白花洋種朝鮮朝顔、学名Datura stramonium、英名jimson weed, devil's trumpet, thorn apple, tolguacha, datura など)は世界の温帯から熱帯に分布するナス科の一年草である。
属名は古いヒンドゥーの言葉で「植物」を表すdhaturaに由来する。種小名stramoniumはこの種のギリシャ語名を付けたものであり、「ナス科」を表すstrychnos (στρύχνος) と、「怒り」を表すmaniakos (μανιακός) に由来する。シロバナヨウシュチョウセンアサガオは他のチョウセンアサガオ属Daturaと同様にアルカロイド類を多く含み、薬用植物として用いられる。特に葉や種は幻覚剤として使用されることがあり、知識不足による過剰摂取で病院に搬送される人や、死亡する人もいる[要出典]。