タマシダ(玉羊歯、学名:Nephrolepis cordifolia)は、ツルシダ科に属するシダ植物で、日本の南部に生育する。乾燥した地面や、樹上にはえ、時に観賞用に栽培される。
茎はごく短く、ほぼ直立して、多数の葉をつける。茎からは針金のような根とともに、細い匍匐茎を出し、新しい芽をつけ、大きな群落になる。また、匍匐茎には球状の固まりをところどころに着ける。これは、水を蓄えるためのものと考えられ、玉羊歯の名もこれによるものである。
葉は細長く、普通は30-40cm、長いものは80cmにも達する。地上のものでは葉はやや立ち上がり、樹上についたものでは、葉は垂れ下がる。葉は一回羽状複葉で、主軸の左右に細長い楕円形の小葉を数十対、時には百対もつける。胞子のう群は小葉の裏側、主脈と葉縁との間に並ぶ。
日本では、本州の伊豆半島から九州、小笠原諸島、南西諸島に、日本国外では、中国や台湾、東南アジア、ポリネシア、アフリカ等に分布する[1]。
主に海岸近くの日当たりのよい場所に生育する。 海岸付近の乾いた斜面や、岩の上、場合によっては樹上に着生する。特に海岸沿いに植えられた街路樹のカナリーヤシの葉の集まった部分には、よくタマシダが密生している。
観葉植物として栽培されることがある。近縁種のセイヨウタマシダ (N. exaltata (L.) Schott) は、南米原産で、観葉植物として改良されたものがあり、学名のままにネフロレピス・エクサルタータとか、ボストンファーンとか呼ばれる。小葉がさらに羽状に切れ込んだものなどがよく見かけられる。本種にも園芸品種はあり、ダッフィー 'Duffii' は、羽片がごく短くなった変異で、葉全体の幅は1-1.5cmにしかならない。中軸は時に二股分枝し、羽片は扁円形から半円まで不規則に変化し、胞子嚢群を滅多につけない[2]。これはニュージーランドあるいは南洋諸島が原産とされ、本種よりの変異と思われる。和名としては石化タマシダ(セッカタマシダ表記も)がある[3]。
日本にはこの他に2種あり、タマシダに似てやや小葉が大きい感じのヤンバルタマシダ (N. hirstula (Forst.) Presl) が南西諸島と小笠原諸島に分布する。もう一種のホウビカンジュ (N. biserata (Sw.) Schott) は、南西諸島に分布し、石灰岩の崖などに生えて、小葉はより幅広く大きく、垂れ下がって長さが2mにも達する。名前の由来は鳳尾貫衆で、貫衆は中国語でヤブソテツなどを指すとのこと。