イチョウガニ属 (Cancer) は、甲殻亜門軟甲綱十脚目イチョウガニ科の属のひとつ。
本属の学名は Cancer(キャンサー)であるが、これは本属の特徴である、硬く幅広の背甲が、ギリシア神話のヘーラーの剣を打ち砕き、星座のかに座ともなったカニに似ることに由来する。また甲羅が非常に大きく盛り上がっている様子を、ヒポクラテスががん細胞 (Cancer) に見立てた、というのも属名の由来の一つだといわれる。和名の由来は甲羅の形がイチョウ(銀杏)の葉に似ていることから。
体型はオウギガニ科に近いズングリとした姿で、鋏脚が大きめな割に、歩脚がやや短いが部分も似ているが、オウギガニ科のカニがどちらかといえば南方系の暖かく、浅い海を好むのに対し、こちらはやや寒冷な海や、深い場所を住処としている。
体型はどの種も甲羅が大きく、非常に盛り上がっている。体長は甲殻の幅が20cm近くになる大型種から、僅か数cm程度の小型種まで様々だが、一般に小型の種ほど浅海に、大型種ほど水深の深い場所に生息して棲み分けている。
ヨーロッパではヨーロッパイチョウガニ (C. pagurus)、アメリカではアメリカイチョウガニ[※ 1] (Metacarcinus magister) が大きくて味の良い重要な食用ガニとなっているが、日本産の種は殆ど利用されていない。
日本近海には、イチョウガニ (C. japonicus) とイボイチョウガニ (C. gibbosulus)、コイチョウガニ (C. amphioetus) の3種が生息する。
以前本属に含まれていた種の中には、Glebocarcinus、Metacarcinus、Romaleon などの各属に移されたものもある。その代表的な種を挙げる。