Lama pacos Linnaeus, 1758
Lama guanicoe pacos
アルパカ(alpaca、Vicugna pacos、漢名: 羊駱駝)は、南アメリカ大陸原産の家畜の1種である。ラクダ科のビクーニャ属またはラマ属に属する。
極めて良質な体毛を具えており、古来、衣類を始めとする生活用品への体毛の加工利用が品種改良の目的であった。
南アメリカ大陸の、特にペルー南部、また、それに接するボリビア、アルゼンチン北部の、海抜およそ3500–5000mのアンデス湿潤高原地帯で放牧されている。アルゼンチンなど南アメリカ南部にはほとんどいない。
体長(頭胴長)約2m、体高(肩高)約0.9–1.0m。体重は約50–55kg。ビクーニャよりやや大きく、グアナコより少し小さい。40km/h前後の速力で走る。妊娠期間は約11ヶ月で、一産一子。
ほかの反芻動物と同じように、上の門歯が無く、歯の代わりに硬質化した皮膚がある。下には牙のような目立つ歯が生えていて、短い草を挟んで千切って食べている。唇がとても器用に動く。
毛を利用するために品種改良された家畜であり、その毛は今日でも広く利用されている。毛の太さは12 - 28μm。アルパカの毛は刈り取るまで伸び続けるため、約2年間くらい切らずに放置しておくと地面に届くほどに伸長する。
毛色は茶・黒・白・ネズミ色の4種類(右列の画像を参照)に大分されるが、さらに細かく分けると25種類ほどにもなる。アメリカ合衆国などの国では認められていない毛の色もある[疑問点 – ノート]。
また、白色以外のアルパカの毛は染色しづらく、そのため色のあるアルパカは飼育を敬遠される傾向にあり、絶滅のおそれが指摘されている。
アルパカの毛の種類は「ワカイヤ(英語版、スペイン語版)」と「スリ(スペイン語版)」の2種類がある。「ワカイヤ」はふわふわでもこもこしている毛で、「スリ」はさらさら、少しドレッドヘアのようにツイストしている。
比較的近縁のリャマ(ラマ)と共通するが、威嚇・防衛のために唾液を吐きかける習性を持つ。この唾には反芻胃(はんすう い)の中にある未消化状態の摂食物も含まれており、強烈な臭いを放つ。この行動によって危害を加える可能性を持った相手を遠ざける。
常に群れをなして暮らし、現地では1年中放牧されていて、草や苔を好んで食べる。 通常時は「フェ〜」「フーンフーン」などといった鳴き方をするが、危険を感じると警戒の声を発する。
南米にはラクダ科リャマ族の4種、すなわち、2つの家畜種アルパカとリャマ、2つの野生種ビクーニャとグアナコが棲息する。しかし、それらの間の類縁関係には諸説ある。
伝統的に、アルパカもリャマも原種はグアナコであり、ビクーニャは家畜化されたことがないと考えられていた[1]。アルパカの学名も、リャマ属の Lama pacos だった。ITIS(統合分類学情報システム)データベースもその学名を採っている。
しかし分子系統では、Kadwell et al. (2001)[2]などにより、アルパカは混血が激しいもののビクーニャが原種とされた。この立場では、学名もビクーニャ属の Vicugna pacos となる。しかしのちの Capo et al. (2009)[3]などでは、アルパカの原種はやはりグアナコだという結果になった。
ただし、アルパカとラマの間には雑種が生まれやすいにも関わらず、中間型がいないため[疑問点 – ノート]、絶滅した野生種から生じたという説もある[要出典]。
なお、2000年代ごろからは、アルパカに限らず家畜全体の扱いとして、家畜は野生種と同種とする趨勢になってきている。その立場では、アルパカはグアナコまたはビクーニャと同種になるわけだが、その種の学名は、ジュニアシノニム(後に記載された学名)のため本来は無効となるグアナコの学名 Lama guanicoe またはビクーニャの学名 Vicugna vicugna が、ICZNの裁定(Opinion 2027)により有効名となる[4][1]。ただし実際には、アルパカをグアナコと同種の Lama guanicoe とする資料は若干あるが、ビクーニャと同種の Vicugna vicugna とする資料は(この学名に関する議論以外では)ほとんどない。
インカ帝国では、医薬用、宗教儀式用としても使われていた。
現代では、アンデスの繁殖儀礼の儀式でアルパカの幼獣が使用されることがある。
現在は多くの場所でアルパカ牧場やペットとして飼育されている。アメリカではペットとして飼っている人も多くいる。
インカ帝国では、高地の物資が不足しやすいと言う特性から、糞までをも燃料として使用し余すところ無く利用されていた。
アルパカの蹄(ひづめ)は、擬音楽器として利用されることもある。
同じアンデス地方で飼われている家畜であるラマ(リャマ)が主に荷役に用いられるのに対して、アルパカはもっぱら体毛を利用する(cf. 動物繊維)。その毛で、インディオ伝統のマントやポンチョ、そのほかのさまざまな衣類を作り、自分達で着たり輸出したりしている。
服飾業界において「アルパカ」の名は複数の意味で用いられる。毛について言う場合、たいていはペルー産のアルパカのものを指す。しかし、生地としてはより広く、アルパカの毛でペルーにて作られたものだけでなく、イタリアやイギリスのブリランテ(brillante. cf.)などを混ぜて作ったものも「アルパカ」と呼ばれる。
生地としての最高級品質は、生まれて初めて刈り取ったアルパカの毛で作ったもので、「ベビー・アルパカ」と称される。1回の採毛量は3kgほどで、隔年に刈り取る。1頭のアルパカからの刈り取りは生涯で3–4回ほどに過ぎない[5]。部位別に見ると背中の毛が価値が高く、腹、脚と地面に近くなるにつれ価値が下がっていく。
南米古来の動物で毛を用いるのは、ビクーニャおよびアルパカ、ラマおよびグアナコの4種である。ビクーニャとアルパカはいずれも毛が重要視されるが、アルパカの場合、毛の品質と量の点で優れており、ビクーニャは柔らかさ、きめ細かさ、希少さと高品質の点で珍重されている。グアナコの毛はビクーニャより若干劣るが、量はやや多い。
アルパカは体毛の利用が主ではあるが、荷役に用いる場合もある。しかしラマより体形が小型で、1回に運べる荷は50kg程度でしかない[5]。