モズ(百舌[3]、百舌鳥[3]、鵙[3]、学名 Lanius bucephalus Temminck & Schlegel, 1847)は、スズメ目モズ科モズ属に分類される鳥類。
日本、中国東部から南部、朝鮮半島、ロシア南東部(樺太南部含む)に分布している[1]。模式標本(L. b. bucephalus 亜種モズ)の産地(模式産地)は日本。日本の北海道、本州、四国、九州に分布している[4][5][6][7][8]。
中国東部や朝鮮半島、ウスリー南部、樺太で繁殖し、冬季になると中国南部へ南下し越冬する[4][8]。日本では基亜種が周年生息(留鳥)するが、北部に分布する個体群や山地に生息する個体群は秋季になると南下したり標高の低い場所へ移動し越冬する[4][5][8]南西諸島では渡りの途中に飛来(旅鳥)するか、冬季に越冬のため飛来(冬鳥)する[4][8]。
全長19-20 cm[4]。眼上部に入る眉状の筋模様(眉斑)、喉や頬は淡褐色[4][8]。尾羽の色彩は黒褐色[4][6]。翼の色彩も黒褐色で、雨覆や次列風切、三列風切の外縁(羽縁)は淡褐色[8]。
夏季は摩耗により頭頂から後頸が灰色の羽毛で被われる(夏羽)[4][8]。オスは頭頂から後頸がオレンジ色の羽毛で被われる[6]。体上面の羽衣が青灰色、体側面の羽衣はオレンジ色、体下面の羽衣は淡褐色[6]。また初列風切羽基部に白い斑紋が入る[4][6][8]。嘴の基部から眼を通り後頭部へ続く筋状の斑紋(過眼線)は黒い[4][7][8]。メスは頭頂から後頸が褐色の羽毛で被われる[6]。体上面の羽衣は褐色、体下面の羽衣は淡褐色の羽毛で被われ下面には褐色や黒褐色の横縞が入る[6][8]。過眼線は褐色や黒褐色[4][6]。
開けた森林や林縁、河畔林、農耕地などに生息する[4][5][7][8]。
食性は動物食で、昆虫 節足動物、甲殻類、両生類、小型爬虫類、小型の鳥類、小型哺乳類などを食べる[5][7]。樹上などの高所から地表の獲物を探して襲いかかり、再び樹上に戻り捕えた獲物を食べる[5][6]。
繁殖形態は卵生。様々な鳥(百の鳥)の鳴き声を真似た、複雑な囀りを行うことが和名の由来(も=百)[3]。2-8月に樹上や茂みの中などに木の枝などを組み合わせた皿状の巣を雌雄で作り、4-6個の卵を産む[5]。年に2回繁殖することもある。カッコウに托卵されることもある[5][7]。メスのみが抱卵し、抱卵期間は14-16日。雛は孵化してから約14日で巣立つ。
速贄と書く。モズは捕らえた獲物を木の枝等に突き刺したり、木の枝股に挟む行為を行う。秋に初めての獲物を生け贄として奉げたという言い伝えから「モズのはやにえ(早贄)」といわれた[9]。稀に串刺しにされたばかりで生きて動いているものも見つかる。はやにえは本種のみならず、モズ類がおこなう行動である[10]。
秋に最も頻繁に行われるが、何のために行われるかは、よく分かっていない。ワシやタカとは違いモズの足の力は弱く、獲物を掴んで食べる事ができない。そのため小枝や棘をフォークのように獲物を固定する手段として使用しているためではないかといわれている[11]。また、空腹、満腹に関係なくモズは獲物を見つけると本能的に捕える習性があり、獲物を捕らえればとりあえずは突き刺し、空腹ならばそのまま食べ、満腹ならば残すという説もある[12]。はやにえにしたものを後でやってきて食べることがあるため、冬の食料確保が目的とも考えられるが、そのまま放置することが多く、はやにえが後になって食べられることは割合少ない。また、はやにえが他の鳥に食べられてしまうこともある。近年の説では、モズの体が小さいために、一度獲物を固定した上で引きちぎって食べているのだが、その最中に敵が近づいてきた等で獲物をそのままにしてしまったのがはやにえである、というものもあるが、餌付けされたモズがわざわざ餌をはやにえにしに行くことが確認されているため、本能に基づいた行動であるという見解が一般的である。
はやにえの位置は冬季の積雪量を占うことができるという風説もある。冬の食糧確保という点から、本能的に積雪量を感知しはやにえを雪に隠れない位置に造る、よって位置が低ければその冬は積雪量が少ない、とされるが、はやにえ自体の理由は不明である。
秋から11月頃にかけて「高鳴き」と呼ばれる激しい鳴き声を出して縄張り争いをする。縄張りを確保した個体は縄張りで単独で越冬する。
2亜種に分類されている[13]。
国際自然保護連合(IUCN)により、軽度懸念(LC)の指定を受けている[1]。
日本の以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている[14]。
日本でモズ属の以下の近縁種が見られる[15]。