コウヤマキ(高野槙、高野槇、学名:Sciadopitys verticillata)は、マツ目コウヤマキ科の日本および韓国済州島の固有種。常緑針葉樹で高木となる。別名ホンマキ。コウヤマキ科は1属1種であり、コウヤマキのみを含む。
かつては世界中に広く分布していたが、新第三紀では北アメリカで、更新世にはヨーロッパでも滅びて、日本と韓国済州島にだけ残存している[3]。
庭園に植栽し、材木としても利用される。世界三大造園木の1つで[要出典]、木曽五木の1つ。古代には、棺材として最上級とされた。弥生時代や古墳時代には木棺[4]として用いられている。
水に強くて朽ちにくいことから、現在でも湯船材や橋梁材として重宝されている。和名は、高野山真言宗の総本山である高野山に多く生えていることに由来する。また、高野山では霊木とされる。
常緑高木で、高さ30 m以上、直径1 mに達するものがある。特に手入れをしなくても狭円錐形の非常に整った樹冠を形成するため、造園木として重宝される。樹皮は若枝では赤褐色であるが、後に灰褐色に変わる。枝は一見して先端に葉が輪生しているように見えるが、実際には長枝の先端部に多数の短枝が輪生しており、その先に長さ6-14 cmの針葉が付いている。
葉には針葉の他に小型の鱗片葉があり、長枝の基部から先端部にかけて螺旋状に付く。針葉は柔らかくしなやかで、2枚の葉が合着するという極めて特異な形態が見られる。合着葉は先端がややへこみ手に刺さるようなことはなく、表面に鈍い光沢がある。葉の裏面には帯白色の気孔帯が見られる。花は雌雄異花で早春に開花する。
コウヤマキ属はコウヤマキの1種のみからなり、かつてはスギ科に含めたが、現在は1種のみでコウヤマキ科とする。今でこそ日本固有の科であるが、かつて北半球全体に広く分布していた。第三紀には、ヨーロッパに多く分布し、現代で利用されている褐炭の起源となっている[5]。また、北米では化石が出土している。
学名のうち、属名 Sciadopitys は、skias(日傘)とpitys(もみの木)の合成語で、輪生する葉が傘の骨に似ていることによるが、マツ科のモミとはそれほど近縁ではない。また、種名 verticillata は、「輪生する」の意味である。
福島県から九州までの山地に野生する。岩尾根によく生育し、幅が狭く、真っ直ぐに突き出たような樹形を見せる。徳島県と山口県でレッドリストの危急種、愛知県と宮崎県で準絶滅危惧の種の指定を受けている[6]。愛知県新城市にある「甘泉寺のコウヤマキ」と宮城県大崎市にある「祇劫寺(ぎこうじ)のコウヤマキ」はそれぞれ国の天然記念物に指定されている。
栽培されることも多い。外国でもコニファーの一種として知られる。ホンマキとも呼び、イヌマキに対比させる。材木としては丈夫で朽ちにくく、水に強いなどの特性から、古代から高級な棺や水桶、橋杭などの材料として多く使われている。古墳時代前期の前方後円墳の竪穴式石室に埋葬された巨大な木棺は、コウヤマキの巨木の丸太をくり抜いて作ったものが多かった(割竹形木棺、舟形木棺)。また、日本ばかりではなく、生い立ちが日本と深く関わっていた百済の武寧王の棺にもコウヤマキが用いられたことが、発掘調査で確認されている。橋杭としては、千住大橋で使われたものが有名である。
高野山を中心に仏に供える花の代用[7]として用いられており、名前もこれに由来する。高野山には、植林されたコウヤマキの人工林がある。また、高野六木にも選ばれている。和歌山県では山でのコウヤマキの採取が激しい。横枝はお供えに向かないので、特に上向きの先端が狙われる。そのため、入りやすい山のコウヤマキは全て上が詰まった姿になっている。
2006年(平成18年)9月6日に誕生した秋篠宮家の悠仁親王のお印でもある[8]。
2011年(平成23年)の大阪歯科大学の藤本らによる論文で、コウヤマキ68%エタノール抽出液中のジイソプロピルエーテル層、ヘキサン層、酢酸エチル層に抗菌効果が認められることが証明され、[9]これを利用した歯磨き用ジェルなどオーラルケア用品も販売されている。元々はオーラルケア用品の開発者が舅の発毛剤の開発のための研究の副産物として見出した効能であり、大阪歯科大学に分析を依頼して有効性が証明された[10]。