ヒゲナガドロガメ(学名:Kinosternon sonoriense)は、ドロガメ科ドロガメ属に分類されるカメ。別名ソノラドロガメ。
アメリカ合衆国(アリゾナ州南部、カリフォルニア州南東部、ニューメキシコ州南部)、メキシコ(ソノラ州北部、チワワ州北西部)[1][2][3]
模式標本の産地(模式産地)はツーソン(アリゾナ州)[3]。種小名sonorienseは「ソノラの」の意で、模式産地がソノラ砂漠内にあることに由来し英名と同義[3]。
アメリカ合衆国(アリゾナ州南部)、メキシコ(ソノラ州北西部)のソノイタ川水系[1][2][3]
最大甲長17.5センチメートル[1][2][3]。オスよりもメスの方が大型になり、オスは最大でも甲長15.5センチメートル[3]。背甲はややドーム状に盛り上がり[2]、上から見ると細長い卵型[3]。椎甲板と肋甲板に明瞭な筋状の盛り上がり(キール)があるが、成長に伴い不明瞭になり老齢個体では消失することもある[1][3]。第1椎甲板が第2縁甲板に接する[3]。第2-4椎甲板は平坦か浅く凹む[3]。第10縁甲板が最も大型(高い)[3]。背甲の色彩は暗黄色や暗褐色で[1][2]、甲板の継ぎ目(シーム)周辺は暗色[3]。腋下甲板と鼠蹊甲板が接する[3]。腹甲は大型[3]。蝶番は発達するが、腹甲を折り曲げても背甲と後葉の間にわずかに隙間がある[3]。腹甲の色彩は黄色や黄褐色、褐色で、シーム周辺は暗色なほか小型の暗色斑が入る個体もいる[1][3]。
頭部はドロガメ属内では中型で、やや扁平[3]。吻端は突出し、上顎の先端は鉤状に尖る[1][3]。喉に6-8本の長い髭状の突起があり、和名の由来になっている[1][3]。頭部や頸部、四肢、尾の色彩は灰色や暗黄色で、頸部や四肢、尾は暗色の個体もいる[3]。喉の色彩は淡黄色[3]。嘴の色彩は黄褐色で暗色の筋模様が入る[1]。
卵は長径2.7-3.5センチメートル、短径1.4-1.9センチメートル[3]。オスの成体は腹甲が明瞭に凹み、左右の肛甲板の間の切れ込みがやや深い[3]。また大腿部や脛には大型鱗が並び、尾の先端に鉤状の大型鱗がある[3]。メスは腹甲が平坦で、左右の肛甲板の間の切れ込みが浅い[3]。
第1椎甲板の最大幅はオス甲長の24.4%、メス甲長の25.5%[3]。喉甲板の幅はオス甲長の20%、メス甲長の19.4%[3]。左右の肛甲板の継ぎ目の長さ(間股甲板長)は甲長の19.5%[3]。
第1椎甲板の最大幅はオス甲長の28.9%、メス甲長の28.8%[3]。喉甲板の幅はオス甲長の17.7%、メス甲長の17.8%[3]。間股甲板長はオス甲長の14.4%、メス甲長の18.5%[3]。
ドロガメ属内ではアリゾナドロガメ、ザラアシドロガメ、ドゥランゴドロガメと単系統群を形成すると推定されている[3]。
標高200-2,000メートルにある底質が泥で小型河川や池沼、湿原などに生息する[2][3]。水棲傾向が強く、水場から離れたり一時的にできた水場に生息することは少ない[2]。昼行性だが[2]、夏季の高温時は夜行性傾向が強くなる[3]。低地では周年活動するが、山間部に生息する個体群は冬季になると水中の泥中などで冬眠する[2][3]。水場の水位が低くなると水の多い場所へ移動し、数キロメートルにわたって陸上を移動することもある[3]。
食性は動物食傾向の強い雑食で、昆虫、甲殻類、貝類、魚類、両生類の幼生、動物の死骸、藻類などを食べる[1][2][3]。主に水中で採食を行い[2]、水底を徘徊しながら泥中で動いた獲物を素早く捕食する[3]。
繁殖形態は卵生。3-5月に交尾を行う[2][3]。5-9月に1回に1-11個の卵を数回に分けて産む[2][3]。卵の発生初期の段階で胚が1度休眠し、ある程度の低温にならないと休眠が解除されない[3]。胚の休眠は15-21.5℃の環境下で90日経過したことで解除された例がある[3]。
開発による生息地の破壊などにより生息数は減少している[2][3]。特に亜種ソノイタヒゲナガドロガメは分布域が限定的で、人為的に移入されたウシガエルによる幼体の捕食、在来種だが保護により増加したデザートパップフィッシュ(Cyprinodon macularis)との競合などにより生息数は減少し絶滅の危険が高いとされる[3]。アメリカ合衆国では州によって保護の対象とされ、メキシコ国内に分布するカメの商業用の採集や輸出が法律により厳しく制限されている[2]。
ペットとして飼育されることがあり、日本にも輸入されている。流通量は少なく、主に基亜種が流通する[3]。飼育下では配合飼料にも餌付く[3]。