スカラベ(英: scarab)は、甲虫類のコガネムシ科にタマオシコガネ属の属名及びその語源となった古代エジプト語。単独の種名ではないため、いくつもの種が存在する。
フランスの生物学者であるジャン・アンリ・ファーブルが自身の著書『昆虫記』の中で研究したスカラベ・サクレには、タマオシコガネやフンコロガシという和名が充てられて紹介され、有名になった。ただ、その後にサクレはファーブルの誤同定であったことが判明し、和名もヒジリタマオシコガネへ改められている。スカラベやフンコロガシは、糞を食料とする糞虫に含めて紹介される。
動物の糞を球状にして食として持ち運ぶ習性で知られている。糞を見つけたスカラベは、頭の先端にある突起を使って糞の塊を切り出し、後足で糞を球形に整えながら前足で糞を付け足すという動作を続け、その場で球を大きくしていく。球が十分に大きくなると、逆立ちして後足で転がし始める。糞球は安全な場所まで運んで食料とするが、運ぶ最中に別のスカラベが現れて糞球を奪ってしまうこともある[1]。
2012年現在、ファーブルの観察や採集のフィールドであった南仏各地は開発が進み、スカラベが激減している。
スウェーデン・ルンド大学の研究者たちは、フンコロガシが糞を転がす直線方向を、天の川の道しるべにして決めていることを突き止めた[2]。
古代エジプトでは糞塊を転がして大きな球体を作るスカラベの習性を神秘的なものと考え、その球体を太陽に見立て、スカラベを太陽の運行を司る神である太陽神ケプリと同一視した[1]。太陽は再生や復活の象徴でもあり、スカラベは聖なる甲虫として崇拝され、スカラベをかたどった石や印章なども作られている。また、スカラベはオスしか存在しない昆虫で、自分の精液を糞の玉の中へ注ぎスカラベが繁殖すると解釈していた。
下記の映画で「スカラベ」についての描写がある。
どちらにも、自分より大型の生き物へ集団で襲い掛かり捕食する肉食の甲虫「スカラベ」が登場する。
甲虫目に限らず、ハエ目やハチ目にも動物の死肉や他の虫の幼虫、水陸性の巻き貝などを捕食するものが存在するが、このような獰猛な種類は存在しない。そもそもスカラベやフンコロガシが属する科の昆虫にそのような種類は見つかっていない。この映画での描写はオサムシ、シデムシ、エンマムシなどの生活描写と、クワガタムシのような大きく鋭い大顎を持つ種類の形態描写を併せた架空の「スカラベ」である。