イボタノキ(水蝋樹・疣取木、学名:Ligustrum obtusifolium)は、モクセイ科の落葉低木。日本各地の山野に自生する。
樹高は1.5~2m。枝はあまり分枝しない、まっすぐなものが多数並ぶ、と言う形になりがち。その小枝は横向きに伸び、葉がほぼ等距離に多数並ぶので、ちょっと羽状複葉のようにも見える。枝は灰白色で新枝には細毛がある。
葉は対生し、長さ2~5cmの楕円形をしている。はじめは黄緑だが、次第に深緑になり、表面につやがなく、柔らかい。
花期は初夏、ギンモクセイに似た芳香ある筒状で先の四裂した白い小さな花を、総状に小枝の先に密集して咲かせる。花序は先端が垂れる。晩秋には直径6mmほどの楕円形の果実がなる。果実は核果で紫黒色に熟す。
陽樹であり、明るい林縁、道路そばなどに見られる。山間の崩壊地などにもよく出現する。
日本では北海道から九州にまで分布する。国外では朝鮮から知られる。
樹皮上に寄生するイボタロウムシの分泌する「いぼた蝋」は蝋燭の原料や日本刀の手入れに用いる。
材はきめが細かく楊枝などを作る。器具の柄などに用いる。薪炭材。
また、ライラックを栽培する場合に、台木として用いられる。そのため、気をつけないと、ライラックを購入して栽培しているつもりで、いつの間にか芽吹いたイボタの方を育ててしまい、花色がおかしいと言うことになる場合がある。
イボタノキの蝋を飲むと咳が止まるという伝統的民間療法が長野県阿智村、喬木村などの周辺に残っている[1]。
イボタノキ属には7種ばかりある。そのうちでもっとも普通に見られるのは本種以外ではネズミモチ(およびトウネズミモチ)であろう。これ(ら)は常緑で厚く幅広い葉を持つもので、見かけが大きく異なる。それ以外の種はイボタノキにやや似ているが、見ることはより少ない。