オオアリクイ(Myrmecophaga tridactyla)は、有毛目アリクイ科オオアリクイ属に分類されるアリクイ。本種のみでオオアリクイ属を構成する。オオアリクイ属はアリクイ科の模式属。
アルゼンチン、エクアドル、ガイアナ、コロンビア、スリナム、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、ペルー、ブラジル、仏領ギアナ、ベネズエラ、ボリビア、ホンジュラス[3]
アルゼンチンの一部(エントレ・リオス州、コルドバ州)、ウルグアイ、エルサルバドル、グアテマラ、ブラジルの一部(エスピリトサント州、サンタカタリーナ州、リオグランデ・ド・スル州、リオデジャネイロ州)、ベリーズでは絶滅したと考えられている[3]
体長100 - 120センチメートル[5][6]。尾長65-90センチメートル[5][6]。体重18 - 39キログラム[5][6]。吻端を除いた全身が粗く長い体毛で被われる。尾の体毛は30センチメートルに達する[5]。喉や胸部から肩にかけて白く縁取られた黒い斑紋が入る[5][6]。尾も含めた下半身の体毛は黒や暗褐色。
吻端は非常に長く、嗅覚も発達している。舌は細長く、最大で61センチメートルに達する[5]。舌は唾液腺から分泌された粘着質の唾液で覆われる。眼や外耳は小型だが[6]、聴覚は発達している。前肢の指は5本で、湾曲した4本の大きな爪があり特に第2、第3指で顕著。第5指は退化し、外観からはわからない。
代謝能力は低く、体温は32.7℃。
2003年に発表されたミトコンドリアDNAの16S rRNAの分子系統解析では、本属とコアリクイ属Tamanduaは12,900,000年前に分岐したという解析結果が得られた[7]。
低地にある草原(サバンナ、リャノなど)、沼沢地、開けた森林などに生息する[5][6]。地表棲。単独で生活する[5]。昼間に活動することもあるが、人間による影響がある地域では夜間に活動する[5]。地面に掘った浅い窪みで1日あたり14-15時間は休む。寝る時は体を丸め、尾で全身を隠すように覆う。移動する時は爪を保護するため、前肢の甲を地面に付けて歩く[6]。泳ぎは上手い。外敵に襲われると尾を支えにして後肢だけで立ちあがり、前肢の爪を振りかざし相手を威嚇する[5]。それでも相手が怯まない場合は爪で攻撃したり相手に抱きつき締めあげる[5]。天敵としてはジャガーなどが挙げられる[5]。
食性は動物食で、主にアリやシロアリを食べるが、昆虫の幼虫、果実などを食べることもある[5][6]。匂いを頼りに巣を探して前肢の爪で破壊する。その後、舌を高速で出し入れ(1分間に150回)して捕食する。1日で約30,000匹のアリやシロアリを食べると推定されている[5]。1つの巣から捕食する量は少なく、1回の捕食に費やす時間も平均で1分ほど[6]。複数の巣を徘徊し、採食を行う。1回の捕食量が少ないことや複数の巣を徘徊することで行動圏内の獲物を食べ尽くさないようにしていると考えられている[6]。直接飲水することもあるが、水分はほとんど食物から摂取する。属名Myrmecophagaは「蟻食い」の意。
繁殖様式は胎生。妊娠期間は142 - 190日[5]。1回に1頭の幼獣を後肢だけで直立しながら産む[5]。授乳期間は約6か月[6]。幼獣は生後1か月ほどで歩行できるようになる。生後6-9か月は母親の背中につかまって過ごす[5]。生後3年で性成熟する[6]。寿命は約16年と考えられている[5]。
食用とされたり、皮革が利用されることもある[3]。薬用になると信じられている地域もある[3]。
生息地の破壊、攻撃的な動物と誤解されての駆除、毛皮用や娯楽としての狩猟などにより生息数は減少している[5][6]。2014年現在は過去10年で生息数が30 %以上減少したと推定されている[3]。1975年のワシントン条約発効時から附属書IIに掲載されている[2]。
一方で、危機を感じた際には、前足にあるカギ爪をふりかざして防衛行動に出ることがあり、2014年にはブラジルで猟師が2名が死亡した例がある[8]。
中南米の一部に約5,000頭が生息するのみの状況、と2014年7月28日付のフランス通信社は伝えている[8]。