ゼブラフィッシュ
分類 界 :
動物界 Animalia 門 :
脊索動物門 Chordata 亜門 :
脊椎動物亜門 Vertebrata 綱 :
条鰭綱 Actinopterygii 目 :
コイ目 Cypriniformes 科 :
コイ科 Cyprinidae 亜科 :
ラスボラ亜科 Rasborinae 属 :
ダニオ属 Danio 種 :
ゼブラフィッシュ D. rerio 学名 Danio rerio 和名 シマヒメハヤ 英名
Zebrafish ゼブラフィッシュ またはゼブラ・ダニオ (学名:Danio rerio) は、インド原産の体長 5 cm ほどの小型の魚である。和名はシマヒメハヤ。コイ目コイ科ラスボラ亜科(ダニオ亜科、ハエジャコ亜科とも)に属し、オイカワ、コイや金魚などに近い。成体の体表に紺色の縦じまをもつことから、シマウマにみたててこの名がある。飼育、繁殖が容易な魚で、流通価格も安く、観賞魚としてよく飼われている。体色やヒレなどに変異のある改良品種が存在する。生物学では脊椎動物のモデル生物としてよく用いられる。モデル生物としてはゼブラフィッシュ、観賞魚としてはゼブラ・ダニオの名が一般的である。
生活環は3か月、寿命は5年程度。性質は活発で、水中を素早く泳ぎ回る。更に温和なので他魚との混泳も同程度のサイズの魚となら問題ない。雑食で飼育が容易。多産で1組の雌雄が一度に数百の卵を産む。卵は直径 1 mm 程度、透明で観察や実験操作が容易である。 また、遺伝子を組み換えられた本種が未承認で輸入、販売され、関わった業者が環境省の指導を受けた事もある。
モデル脊椎動物として[編集]
脊椎動物で見られる生命現象を研究するためのモデル生物として世界中の研究室で研究に用いられている。1981年にはホモ二倍体の個体が得られている[1]。脊椎動物初の化学変異原ENUを用いた大規模変異スクリーニングがゼブラフィッシュを用いて行われた。遺伝子機能研究に欠かせない遺伝子導入、トランスジェニックフィッシュの作製を、Tol2トランスポゾンを用いて非常に容易に行うことができる。また、CRISPR/Cas9を用いた遺伝子変異導入技術も確立されている。
有用性[編集]
この魚は、以下のように遺伝学研究、発生生物学研究に用いる上での優れた特長を持っている。
- 飼育が容易。
- 多産である。1日で1組のオスメスが最大数百の受精卵を産する。
- 世代時間が短い。生殖を始めるまで2か月半〜3か月くらいである。
- 卵から孵化までの過程で胚が透明である。胚の観察、操作が容易である。
結果として、実験発生学的実験と遺伝学的解析を同時に行える点で、脊椎動物では他に例がない。脊椎動物であるから、ヒトを含んで共通点が多い[2]。
観賞魚 改良品種など[編集]
ダニオは縄張りをつくるため、水槽内では他の小型の観賞魚を追い回す習性のものが多い。
- ゼブラ・ダニオ
- この記事で説明されている。ダニオの中では最も広く流通している。
- ホワイトパール・ゼブラ・ダニオ
- 白っぽい色をしたゼブラ・ダニオ。
- ロングフィン・ゼブラ・ダニオ
- 尾の長いゼブラ・ダニオ。長い尾が餌と間違えられ、破れてしまう事がある。破れた部分は、しばらくすれば再生する。
- レオパード・ダニオ
- 学名:Danio frankei
- ゼブラダニオの縞模様が途切れ途切れになって、スポット状になった種類。ゼブラダニオの改良品種という説と、別種と言う説がある。上記の学名は別種とする場合の学名である。ゼブラダニオと同じくロングフィンなどのバリエーションが存在する。
- パール・ダニオ
- 学名:Danio albolineatus
- 淡い青紫の体色で、1-2本の黄色いラインが入る。近似種に紫色が濃くラインの入らない「エスメラルダ」と呼ばれるDanio rosea種が存在する。
- ジャイアント・ダニオ
- 学名:Devario malabaricus
- ゼブラダニオとは別のDevario属の魚で、全長10cmとやや大型になる。ラインの入り方の異なる2種類のタイプがある。
- オレンジグリッター・ダニオ
- 学名:Danio choprai
- 比較的新しく紹介された種類。鮮やかなオレンジ色の体色に横縞が入る。
- ダニオ・エリスロミクロン
- 学名:Danio erythromicron
- かつては幻の魚と言われていた魚で、青い縦縞が特徴。Microrasbora属に分類されていたがDanio属に移された。ダニオの仲間は総じて活発だが、本種は臆病で物陰に隠れがちである。
- レッドゼブラダニオ
- かつてインドネシアから輸入された、珊瑚の遺伝子を導入した遺伝子組み換えゼブラダニオ。遺伝子組み換え生物は遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)により規制されているが、本種はその認可を受けないまま輸入、販売された。環境省は本種を購入し飼育を行っている場合、購入した店舗に返品するよう要請している。[1]
成長と行動[編集]
生後17時間で自発的なしっぽの動きがみられる[3]。
その3-4時間後には、不規則なburstパターンの活動からside-sideの規則的な運動をするようになる。[4]
生後21時間でRBニューロンを介した接触反射を示すようになる[5]。
1-2日目には規則的な遊泳がみられ、また刺激場所に応答した適切な反射を示す[6]。
4日目には大まかな神経系が完成し、摂食行動も示すようになる(まだ脳は成長し続ける)[7]
行動の種類[編集]
神経系[編集]
ゼブラフィッシュの神経系はそのサイズとアクセスのしやすさから、神経科学のモデル動物として活用されている。
データベース・モデル[編集]
ZFINに掲載されているアトラス・リソースのうち[9]、神経系に着目しているもの
- Z-Brain
- Nature Methods(2015)[10] で発表.
- Brain Browser
- Hardcopy atlas of early zebrafish brain development
- Hardcopy atlas of the adult nervous system
- Zebrafishbrain
そのほかにも
- ViBE-Z
- Nature Methods(2012)[11] で発表.
- ZFAP[12]
などがある。
データベース間をまたいで利用できるような研究も進められている[13]
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^ Production of clones of homozygous diploid zebra fish (Brachydanio rerio) https://www.nature.com/articles/291293a0
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^ 浅島・武田編(2007)、p.76
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^ > The first movements of the larva, which consist of spontaneous contractions of the tail, appear at just 17 h postfertilization (Saint-Amant & Drapeau 1998) http://www.annualreviews.org/doi/full/10.1146/annurev-neuro-071714-033857
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^ > Over the next 3–4 h, activity patterns mature from uncorrelated bursting patterns to coordinated side-to-side alternation http://www.annualreviews.org/doi/full/10.1146/annurev-neuro-071714-033857
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^ > Touch-evoked responses, mediated by Rohon-Beard sensory neurons, appear at 21 h (Saint-Amant & Drapeau 1998) http://www.annualreviews.org/doi/full/10.1146/annurev-neuro-071714-033857
-
^ > by 1–2 days, the fish are able to swim in a coordinated manner and respond appropriately to stimuli in different locations (Saint-Amant & Drapeau 1998) http://www.annualreviews.org/doi/full/10.1146/annurev-neuro-071714-033857
-
^ > By 4 days old, although the brain continues to grow, major brain structures and axon tracts, including different clusters of neuromodulatory neurons, are present, and the larvae begin to feed http://www.annualreviews.org/doi/full/10.1146/annurev-neuro-071714-033857
-
^ > . Escapes are at first evoked reliably by touch and later, at about four days old, by acoustic stimuli (Kimmel et al. 1974, Kohashi et al. 2012). http://www.annualreviews.org/doi/full/10.1146/annurev-neuro-071714-033857
-
^ https://wiki.zfin.org/display/general/Anatomy+Atlases+and+Resources
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^ https://www.nature.com/articles/nmeth.3581
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^ https://www.nature.com/articles/nmeth.2076
-
^ http://www.fishnet.org.au/
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^ https://academic.oup.com/gigascience/article/6/8/1/4085311 https://science.nichd.nih.gov/confluence/display/burgess/Brain+Browser
外部リンク[編集]
- 埼玉大学 発生生物学研究室[1]
- 筑波大学 小林研究室[2]
- 千葉大学 生化学研究室 / 伊藤研究室[3]: Notch. 細胞移動(側線原基)
- 東京大学 動物発生学研究室/ 武田研究室[4]
- 東京工業大学 川上研究室[5]
- 早稲田大学 高松研究室[6]
- 青山学院大学 平田研究室[7]
- 山梨大学 川原研究室[8]
- 基礎生物学研究所 高田研究室[9]
- 基礎生物学研究所 生物機能解析センター(亀井特任准教授)[10]
- 基礎生物学研究所 東島研究所[11]
- 遺伝研 川上研究室[12]
- 名古屋大学 脳機能構築学研究室 (小田教授)[13]: マウスナー細胞
- 京都大学 瀬原研究室[14]
- 広島大学 菊池研究室[15]
- 兵庫県立大学 矢田研究室[16]
- 高知工科大学 蒲池研究室[17]
- 九州大学 石谷研究室[18]
- 宮崎大学 剣持研究室[19]
- 理研 岡本研究室[20]
参考文献[編集]
浅島誠・武田洋幸編、『シリーズ21世紀の動物科学 5 発生』、2007、培風館
Zebrafish Behavior: Opportunities and Challenges.[21]
関連項目[編集]
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