ジギタリス(英語: Digitalis、実芰答利私、実芰答利斯)は、APG体系のオオバコ科の属の一つ。従来の分類法新エングラー体系ではゴマノハグサ科とされている。
ジギタリスは別名をキツネノテブクロ(英名のfoxgloveの直訳である)という。ヨーロッパ原産であるが、観賞用あるいは薬用に世界中で栽培される。高さ1メートル前後で分枝しない。後述の通り全草に猛毒がある。
本種の学名はラテン語で「ゆび」を表すdigitusに由来する。これは花の形が指サックに似ているためである。数字のdigitやコンピューター用語のデジタル(ディジタル、digital)と語源は同じである。種名のpurpureaは「紫」の意味。園芸種には白やピンクの花色のものがある。
地中海沿岸を中心に中央アジアから北アフリカ、ヨーロッパに20種あまりが分布する。一・二年草、多年草のほか、低木もある。園芸用に数種が栽培されているが、一般にジギタリスとして薬用または観賞用に栽培されているのは、D. purpurea種である。
西洋では暗く寂れた場所に繁茂し不吉な植物としてのイメージがある植物とされる。いけにえの儀式が行われる夏に花を咲かせることからドルイド達に好まれると言われる。「魔女の指抜き」「血の付いた男の指」などと呼ばれていた地域もある。メーテルリンクは、「憂鬱なロケットのように空に突き出ている」と形容している。
ジギタリスには全草に猛毒があり観賞用に栽培する際には取り扱いに注意が必要である。ジギタリス中毒とも呼ばれる副作用として、不整脈や動悸などの循環器症状、嘔気・嘔吐などの消化器症状、頭痛・眩暈などの神経症状、視野が黄色く映る症状(黄視症)などがある。
ジギタリスの葉を温風乾燥したものを原料としてジギトキシン、ジゴキシン、ラナトシドCなどの強心配糖体を抽出していたが、今日では化学的に合成される。古代から切り傷や打ち身に対して薬として使われていた。1776年、英国のウィリアム・ウィザリングが強心剤としての薬効を発表[1]して以来、うっ血性心不全の特効薬としても使用されている。以前は日本薬局方にDigitalis purpurea を基原とする生薬が「ジギタリス」「ジギタリス末」として医薬品各条に収載されていたが、第14改正日本薬局方第二追補(2005年1月)でともに削除された。
花の形がユニークで美しいので、花壇用に栽培されている。5月から6月に播くと、ほぼ一年後に開花する。タネはかなり細かいので、浅い鉢に播き、受け皿で吸水させて発芽させる。水はけのよい土地を好むが、高温多湿にやや弱く、日本の暖地では栽培しにくい。