ニラ(韮、韭、Allium tuberosum)はネギ属に属する多年草。緑黄色野菜である。
『古事記』では加美良(かみら)、『万葉集』では久々美良(くくみら)、『正倉院文書』には彌良(みら)として記載がある。このように、古代においては「みら」と呼ばれていたが、院政期頃から不規則な転訛形「にら」が出現し、「みら」を駆逐して現在に至っている。近世の女房言葉に二文字(ふたもじ)がある。
方言では、ふたもじ(二文字。千葉県上総地方)、じゃま(新潟県中越地方)、にらねぎ(韮葱。静岡県、鳥取県などの一部)、こじきねぶか(乞食根深。愛知県、岐阜県の一部)、とち(奈良県山辺郡、磯城郡)、へんどねぶか(遍路根深。徳島県の一部)、きりびら(沖縄県島尻郡)、ちりびら(沖縄県那覇市)、きんぴら(沖縄県那覇市)、んーだー(沖縄県与那国島)などがある[6]。
夏には葉の間から30 - 40cmほどの花茎を伸ばす。花期は8 - 10月頃。花は半球形の散形花序で白い小さな花を20 - 40個もつける。花弁は3枚だが、苞が3枚あり、花弁が6枚あるように見える。雄蕊(おしべ)は6本、子房は3室になっている。子房は熟すると割れて黒色の小さな種を散布する。
本種の原種は、中国北部からモンゴル・シベリアに自生する Allium ramosum で、3,000年前以上前に栽培化されたと考えられる。この種とニラを同一種とみなす場合もある[7]。株分けまたは種によって増やす。
全草に独特の匂いがある。このため、禅宗などの精進料理では五葷の一つとして忌避される。匂いの原因物質は硫化アリル(アリシン)などの硫黄化合物である。
国内生産量は約6万トンで、全生産量の4割超を1位の高知県と2位の栃木県が占め、次いで茨城県、群馬県、宮崎県、福島県、北海道が続く。
ニラの生育に適した温暖な気候で知られる高知県香南市、また餃子の街である栃木県宇都宮市の周辺などが主な産地として有名。
緑色の葉ニラの他、次のものがある。
なお、形状や色がよく似たスイセンの葉をニラと間違えて食べ、中毒になった例があるので注意が必要である[8]。
細長くまっすぐに伸びた葉は加熱すると柔らかく、和食で汁の実や薬味、おひたしなどにする他、中華料理、韓国料理によく用いられる。若い花芽もおひたしや炒め物として食べることが出来る。
中華料理では、単独や他の野菜や肉と合わせた炒め物、レバーと炒め合わせた物(レバニラ炒め、またはニラレバ炒め)、焼きそば(「韭菜炒麺」)、餃子の具(中国では一般の餃子にはニラを混ぜ入れることは少なく[9]、ニラを使う物は「韭菜餃子」と称して区別される)、ニラ饅頭(点心)、春巻き(黄ニラ)、ニラの卵とじなどがポピュラーな用途である。春節(旧正月)には、黄ニラと豚肉を使った春餅の料理を食べる[10]。北京料理では、羊肉しゃぶしゃぶの薬味のひとつとして、ニラの花の塩漬けが用いられる。
韓国料理では「ヤンニョム」と称する合わせ調味料の薬味としたり、キムチ、チヂミの具などとしてよく利用される。
郷土料理では、岡山県で、黄ニラが寿司の具としても用いられる。栃木県鹿沼市などでは、蕎麦の具として茹でたニラを添えた、ニラ蕎麦がある。大分市周辺には、ニラを主な具とするニラチャン(ニラちゃんぽん)という麺料理がある。
栄養価が高く、スタミナが付く食材として利用されている。β-カロテンやビタミンA、ビタミンC、カルシウム、リン、鉄などのミネラルに富み、匂い成分の硫化アリルがビタミンB1と結合してその吸収を良くし、代謝機能、免疫機能を高め、疲労回復に役立つ。また、整腸作用があり、昔より胃腸(特に下痢)に効く野菜として親しまれ、症状が重い時はニラの煮汁を飲んでも効果がある。
ネギ亜科の別属にも、和名に「ニラ」を含むものがあるが、本種とは近縁ではない。
ニラの花(千葉大学キャンパス)