アオサギ(青鷺、蒼鷺、Ardea cinerea) は、ペリカン目サギ科アオサギ属に分類される鳥類。
アフリカ大陸、ユーラシア大陸、イギリス、インドネシア西部、日本、フィリピン北部、マダガスカル
夏季にユーラシア大陸中緯度地方で繁殖し、冬季になるとアフリカ大陸中部、東南アジアなどへ南下し越冬する。アフリカ大陸南部やユーラシア大陸南部などでは周年生息する。日本では亜種アオサギが夏季に北海道で繁殖のため飛来し(夏鳥)、冬季に九州以南に越冬のため飛来し(冬鳥)、本州・四国では周年生息する(留鳥)[3][5]。
全長88 - 98センチメートル[6]。翼開長150 - 170センチメートル[6]。体重1.2 - 1.8キログラム[6]。メスよりもオスの方がやや大型になる[4]。頭部は白く、後頭に黒い羽毛が伸長(冠羽)する[4][6]。眼上部から後頭の冠羽に繋がるように眉状の黒い筋模様(眉斑)が入る[6]。上面は青灰色[4]、和名の由来(漢字表記の蒼はくすんだ青色のことも指し、中国語名と同一)になっている。種小名cinereaは「灰色の」の意で、英名(grey)と同義。背の飾羽は灰色[4]。下面は白い羽毛で被われ、胸部の羽毛は伸長(飾羽)する。前頸から胸部にかけて破線状の黒い縦縞が入る[4]。側胸や腹部は黒い[4]。雨覆の色彩は灰色で、初列雨覆や風切羽上面の色彩は黒い。人間でいう手首(翼角)の周辺には2つの白い斑紋が入る。
若鳥は上面が灰褐色、頭部が灰色の羽毛で被われる。若鳥や冬羽は上嘴が黒ずむ。眉斑は不明瞭で、後頭に冠羽が伸長しない。繁殖期は眼先がピンク色で、嘴や後肢の色彩もピンク色。非繁殖期は眼先が黄緑色で、嘴や後肢の色彩が黄色。メスはオスと比較すると冠羽や飾羽があまり発達しない[4]。
以下の分類・分布はIOCに、和名は日本鳥類目録 改訂第7版に従う[2][3]。
河川、湖沼、湿原、干潟、水田などに生息する[5]。非繁殖期には単独で生活するが[4][6]、本種のみで数羽が同じねぐらに集まったりコサギなどのねぐらに混ざることもある[5]。
魚類、両生類、昆虫などを食べるが、鳥類の雛、小型哺乳類を食べることもある[5]。水辺で待ち伏せたり、水辺や浅瀬を徘徊しながら獲物を探す[5][6]。小型の魚類は嘴で挟んで捕えるが、コイなどの大型の魚類は側面から嘴で突き刺して捕えることもある[5]。獲物を発見すると、素早く頸部を伸ばし捕食する。
繁殖形態は卵生。松林などに集団繁殖地(コロニー)を形成する[5]。主に本種のみのコロニーを形成するが、同科他種のコロニーに混ざることもある[5]。主にオスが巣材を集め、メスが樹上に木の枝を組み合わせた皿状の巣を作る[4][5]。日本では4 - 5月に1回に3 - 5個の卵を産む[6]。同じ巣を修理して何年にもわたり使用しつづける[5]。雌雄で抱卵・育雛を行い、抱卵期間は23 - 28日[4]。雛は孵化してから50 - 55日で巣立つ[5][6]。生後2年で成熟する[6]。アシの生えた地上での営巣記録もある。
害鳥としての駆除などにより生息数が減少している地域もある。例としてイングランドとウェールズでは1970年代後半には年あたり4,600羽以上が駆除されたと推定され、1979年における繁殖個体数は5,400ペアまで激減した[7]。日本では集団繁殖地は限定的で、日本海側に多い傾向がある[5]。1978年に環境庁による調査では確認された繁殖地は18メッシュで、例として猿賀神社のように消滅した繁殖地もある[5]。一方で関東地方では近年繁殖数が増加傾向にあり、例として神奈川県では1995年に初めて繁殖が確認された[5]。
夕風や水青鷺の脛(はぎ)をうつ 与謝蕪村