サバクトビバッタ(砂漠飛蝗、学名:Schistocerca gregaria )は、バッタ科のバッタ。サバクワタリバッタ、サバクバッタ、エジプトツチイナゴとも。代表的なワタリバッタ(locust)として知られ、時々大発生し、過去何世紀もの間、アフリカ、中東、アジアの農業に被害(蝗害)を与え続けている。現在でも、世界の人口の10分の1の人々が、この昆虫の被害を受けている。サバクトビバッタは体が大きく、移動距離も速度も大きいため、大きな蝗害を起こしやすい。1年当たりの世代交代回数は2-5回である。
エチオピア高原 (Ethiopian Highlands) 北部のティグレ州 (Tigray Region) やエリトリアで生まれた幼虫は、紅海沿岸にゆっくりと移動してそこで成長する。そのため、エチオピアやエリトリア、スーダンなどで幼虫のうちに対策を取れば、東アフリカでの蝗害を予防することが可能である[2]。2004年に発生したサバクトビバッタは西アフリカの農業に大きな打撃を与え、地域の食糧安全保障に影響が出るほどだった。サバクトビバッタの被害は、これらの地域の飢饉に大きな影響を与えている。
成虫のオスの体長は40-50mm、メスの体長は50-60mmであり、蝗害を起こすバッタの中では大型の部類に入る。前翅は半透明で多数の斑点があり、後翅はほぼ透明で斑点が無い。体色は、成虫になって直後はピンク、しばらくするとバラ色、茶色、オレンジブラウンなどになる。成熟するとオスはくすんだ黄色、メスは明るい黄色になる[3]。
サバクトビバッタは雨季になるまで、1匹1匹が別々に暮らしている。雨季になって草が生長すると、雌が砂地に卵を産む。卵が孵った時に、草が餌と隠れ家になるためである。
ところが草地が元々少なかったり、降水量が減って草地が減ったりすると、幼虫は残された餌場を求めて集まってくる。このような集団環境で育ったバッタが生む子の体色は、元来の緑ではなく、黄色や黒に変化する。この現象は相変異と呼ばれている。幼虫が成長すると、茶色や赤、黄色になる。また、羽根に比べて体長が短くなる。さらに、互いを引き寄せるフェロモンを放ち、群れを作るようになる。幼虫と成虫ではフェロモンの種類が異なる。幼虫のフェロモンは互いを引き寄せる働きをするが、成虫が出すフェロモンは方向感覚を狂わせる働きがある。そのため、成虫となった群れは2-3日で崩壊し、再び1匹1匹に分かれることがある(この性質を利用して、蝗害を防ぐ研究も進められている)。
大発生期を除いて、サバクトビバッタの分布はモーリタニアを西端としてサハラ砂漠、アラビア半島、インド北部までの1,600万平方キロメートルに集中している。気象条件と生活環境によっては、群れが世代交代を繰り返しながら移動していくため、北はスペインやロシア、南はナイジェリアやケニア、東はインドや西南アジアにまで達する。このためサバクトビバッタによる蝗害は60ヶ国、3,200万平方キロメートル(地球上の陸地の約20%)の範囲で起こり得る。
飛蝗の群れは、風に乗って移動するため、移動速度は概ね風速に近い。1日あたりの飛行距離は100-200キロメートルである。到達高度は最高で海抜2,000メートルであり、これ以上は気温が低すぎるため上ることができない。そのため、アトラス山脈、ヒンドゥークシュ山脈(アフガニスタン)、ヒマラヤ山脈を超えて進むことはできない。また、西アフリカ南部や中部アフリカの熱帯雨林や中央ヨーロッパに進む事はない。一方で、紅海を超えてアフリカからアラビア半島を移動することが可能であり、1987年から1989年にかけての大発生の時には10日間をかけてアフリカから大西洋を越えてカリブ海にまで到達している。1つの群れは最大で1,200平方キロメートルを移動し、1平方キロメートルあたりに4,000万から8,000万匹が含まれている。バッタの寿命は3-6ヶ月であり、群れは10-16世代にわたって増加を続ける。
サバクトビバッタは、毎日自分の体重と同じ量の緑の植物を食べる。種類は葉、花、皮、茎、果実、種と問わない。農作物、非農作物のいずれも食し、農被害としてはトウジンビエ、米、トウモロコシ、モロコシ、サトウキビ、大麦、綿、果樹、ナツメヤシ、野菜、牧草地、アカシア、マツ、バナナなどが多い。さらにはバッタからの排泄物が食べ残した食物を腐らせる。
サバクトビバッタによる農被害は、早くも『聖書』や『コーラン』に見られる。エチオピア大飢饉に関する古文書 (Famines in Ethiopia) にも17世紀の被害が報告されている。20世紀に入ってからは、1926年-1934年、1940年-1948年、1949年-1963年、1967年-1969年、1987年-1989年、2003年-2005年などの被害が大きい。
2003年10月から2005年5月まで、西アフリカでサバクトビバッタの大量発生があった。始めはモーリタニア、マリ、ニジェール、スーダンでそれぞれ独立した小規模の群れが発生した。この後、セネガルのダカールからモロッコの付近で2日間の異常な大雨が降り、それが原因で6ヶ月にわたってサバクトビバッタは急速に増え続けた。群れは移動で拡散し、20ヶ国以上、130,000平方キロメートルが被害を受けた。国際連合食糧農業機関(FAO)の見積もりによると、この対策費は4億ドル以上、農被害は25億ドルに上った。この被害は2005年前半に降水量が減り、気温が下がることでようやく終結した。
被害を受けたのは、アルジェリア、ブルキナファソ、カナリア諸島、カーボベルデ、チャド、エジプト、エチオピア、ガンビア、ギリシア、ギニア、ギニアビサウ、イスラエル、ヨルダン、レバノン、リビア、マリ共和国、モーリタニア、モロッコ、ニジェール、サウジアラビア、セネガル、スーダン、シリア、チュニジアである。
サバクトビバッタ(砂漠飛蝗、学名:Schistocerca gregaria )は、バッタ科のバッタ。サバクワタリバッタ、サバクバッタ、エジプトツチイナゴとも。代表的なワタリバッタ(locust)として知られ、時々大発生し、過去何世紀もの間、アフリカ、中東、アジアの農業に被害(蝗害)を与え続けている。現在でも、世界の人口の10分の1の人々が、この昆虫の被害を受けている。サバクトビバッタは体が大きく、移動距離も速度も大きいため、大きな蝗害を起こしやすい。1年当たりの世代交代回数は2-5回である。
エチオピア高原 (Ethiopian Highlands) 北部のティグレ州 (Tigray Region) やエリトリアで生まれた幼虫は、紅海沿岸にゆっくりと移動してそこで成長する。そのため、エチオピアやエリトリア、スーダンなどで幼虫のうちに対策を取れば、東アフリカでの蝗害を予防することが可能である。2004年に発生したサバクトビバッタは西アフリカの農業に大きな打撃を与え、地域の食糧安全保障に影響が出るほどだった。サバクトビバッタの被害は、これらの地域の飢饉に大きな影響を与えている。