クサギ(臭木、Clerodendrum trichotomum)は日当たりのよい原野などによく見られるシソ科の落葉小高木。葉に悪臭がある事からこの名がある。日本全国のほか朝鮮、中国に分布する。従来はクマツヅラ科に入れられてきたが、現在はシソ科に移されている。
種小名は、「三分岐」の意味で[4]、花序の枝を指す。
葉は大きく、長い葉柄を含めて30cmにもなり、柔らかくて薄く、柔らかな毛を密生する。葉を触ると、一種異様な臭いがするのがこの名の由来である。
花は8月頃咲く。花びらは萼から長く突き出してその先で開く。雄しべ、雌しべはその中からさらに突き出す。花弁は白、がくははじめ緑色でしだいに赤くなり、甘い香りがある。 昼間はアゲハチョウ科の大型のチョウが、日が暮れるとスズメガ科の大形のガがよく訪花し、受粉に与る。果実は紺色の液果で秋に熟し、赤いがくが開いて残るためよく目立つ。この果実は鳥に摂食されて種子分散が起きると考えられている。
道ばたなどでよく見かけ、遷移においては、藪の状態の所に侵入する最初の樹木として先駆植物(パイオニア)の典型である。
クサギの花では明確な雄性先熟が見られる[5]。野外観察によると、クサギの花の開花は午前中から午後の初めまでが多く、開花すると花冠は2日から3日にわたり開きっぱなしとなる。開花初日から雄蕊も雌蘂も花冠より長く抜き出して展開しているのであるが、開花初日では雄蘂は完全に展開するのに対し、雌蘂の展開は不完全であった。2日目になると雄蕊はしおれ、雌蘂では柱頭が2つに裂開して受粉可能な状態になった。外見的には開花当初は雄蕊も雌蘂も花冠から抜き出て前に伸び、先端は共にやや上を向く。雄蕊では雄蕊の展開中に葯が開き、雄蕊が伸びきった段階では葯の表面に花粉が完全に露出した。2日目になると雄蘂は下向きにしおれ、雌蘂は上向きになって柱頭が裂開する。3日目になると花冠と雄蕊は脱落し、雌蘂だけが残る。
つまり本種では1つの花において雄蕊と雌蘂の伸張と成熟に明瞭な差があり、まず1日目に花粉の散布が行われ、この間は雌蘂は受粉可能になっていない。2日目には雄蕊がしおれて下を向き、その段階で雌蘂が受粉可能となる。
日本では北海道から九州、琉球列島まで分布し、国外では台湾、中国まで分布がある。四国以南には、葉が長くなり、花序がよりまとまって生じる変種ショウロウクサギ (C. trichotomum var. esculentum) があり、沖縄ではほとんどがこれである。ほかに、葉にほとんど毛がないアマクサギ (C. trichotomum var. yakusimensis) がある。
葉には名の通り特異なにおいがあるが、茶の他に、ゆでれば食べることができ若葉は山菜として利用される。収穫時には、臭いが鼻につくが、しばらくすると不思議なくらいに臭いを感じなくなる。果実は草木染に使うと媒染剤なしで絹糸を鮮やかな空色に染めることができ、赤いがくからは鉄媒染で渋い灰色の染め上がりを得ることができる。実の青色色素は名古屋大学の佐々木教祐らにより構造が付きとめられ、種小名にちなんでトリコトミン (Trichotomine) と命名されている[6]。
また、英語名をharlequin glory bower[3]などといい、欧米では観賞用に栽培される。
日本でクサギそのものが栽培されることは少ないが、栽培は容易。繁殖は挿し木、株分け、根伏せなど。種子以外に根からの不定芽でよく増える。 同属のヒギリ(C. japonicum 、東南アジア原産の常緑低木)、ゲンペイクサギ(C. thomsoniae 、アフリカ 原産の常緑つる性木本)、ボタンクサギ(C. bungei 、中国原産の落葉低木)などは観賞用に栽培される。ボタンクサギは時に野外に逸出して野生状態で生育している。
クサギの他にも、以下のように、その臭気のためにクサギの名を持つ木がある。
クサギ(臭木、Clerodendrum trichotomum)は日当たりのよい原野などによく見られるシソ科の落葉小高木。葉に悪臭がある事からこの名がある。日本全国のほか朝鮮、中国に分布する。従来はクマツヅラ科に入れられてきたが、現在はシソ科に移されている。
種小名は、「三分岐」の意味で、花序の枝を指す。