Wasabia japonica (Miq.) Matsum.
和名 ワサビ 英名 Wasabi, Japanese horseradish わさび 根茎 生[1]100 gあたりの栄養価エネルギー 食物繊維 ビタミンビタミンA相当量 チアミン (B1)リボフラビン (B2)ナイアシン (B3)パントテン酸 (B5)ビタミンB6葉酸 (B9)ビタミンCビタミンEビタミンKミネラルナトリウムカリウムカルシウムマグネシウムリン鉄分亜鉛銅セレン他の成分水分水溶性食物繊維不溶性食物繊維ビオチン(B7)硝酸イオン[2]。廃棄部位: 側根基部及び葉柄マイクログラム • mg = ミリグラムワサビ(山葵)は、アブラナ科ワサビ属の植物。日本原産[3]。食用。
強い刺激性のある香味を持つ。
本種の学名はWasabia japonica (Miq.) Matsum.とされることが多いが、現在ではWasabia属は独立した属とはみなされていないので、Eutrema japonicum (Miq.) Koidz.が正しい学名である。[4]918年の『本草和名』で、「山葵」の和名を和佐比と記している。同じく平安時代の『和名類聚抄』にも和佐比と記されている。
ワサビの名が付く近縁な植物、特にセイヨウワサビと区別するため本わさびと呼ぶことがある。
地下茎をすり下ろしたすりわさびの事をワサビと呼ぶこともある。寿司屋の符牒になみだ、さびがある。寿司や刺身の世界的な普及に伴って、英語、フランス語、台湾語、広東語、韓国語などでそのままwasabiという発音で借用されている。
深山幽谷の清冽な渓流に沿い自生していたものが、その利便から人里近辺の清流栽培へと根分けされて広がり、食文化の国内需要とともに農業生産されるに至る。
日本の主要な産地は静岡県、長野県、東京都(奥多摩)、島根県、山梨県、岩手県、奈良県等である。なかでも、匹見ワサビ(島根県益田市)、安曇野ワサビ(長野県安曇野市)、有東木ワサビ(静岡市)は日本三大ワサビと呼ばれる。ほか、台湾南部、ニュージーランド、中国雲南省などでも栽培されている。また、ワサビの産地である伊豆市や安曇野市では市の花に指定されている。
栽培の方法は大別すると、渓流や湧水で育てる水ワサビ(谷ワサビ、沢ワサビ)と、畑で育てる畑ワサビ(陸ワサビ)がある。
水ワサビはワサビ田で栽培し、その根茎(根と茎の間の芋の部分)は生食用として利用される。このワサビ田は溪流式、地沢式、平地式、畳石式の4つの様式に分かれる[15]。
水ワサビの生育には、豊富で綺麗な水温9 - 16℃ [16]の水と、砂地などの透水性が良い土壌が必要で、強い日光を嫌う。粘土質土壌や腐葉土質を嫌うため肥料等は必要なく育成の手間も殆ど要らないが、大量のきれいな水のある場所に生育が限定されるため、栽培の難しい農作物としても知られる。なお、経験的に、20℃ 3時間以上で根の腐敗が始まるとされる[17]。一方、山間の沢や水路を利用して小規模に栽培されることもある。
種類は赤茎種と緑茎種の2種類がある。静岡県で盛んに栽培される真妻種、島根県の在来種は赤茎系とされる。キャベツと同じアブラナ科の植物であるため、時としてスジグロチョウ[18]やモンシロチョウ[19]の幼虫(青虫)に葉を食害される。また、根茎部分はヨコエビによる食害が報告されている[20][21]。
畑ワサビは直接水を利用しないで、保育から収穫までを畑で行うもので、水ワサビに比べ品質は落ちるが温度と湿度管理が整えばどこでも栽培することが可能である[15]。しかし、株分けによる栽培を続けると数年で「退化現象」と呼ばれるウイルス感染に伴う成長障害や不稔、病気[22][23]が生じ衰退する。この退化現象を回避するため茎頂培養(成長点培養)によるウイルスフリー苗(メリクロン苗)の生産技術が1990年代には確立され栽培農家に供給されている[24]。栽培では、日射を避けるため日よけを施した広葉樹林[25]や針葉樹林の湿り気の多い場所が多く利用される。ハウス栽培も行われる[26]。2000年代になり人工光源を使用した栽培実験も行われている[27]。
ワサビの上品な味と香り、辛み、苦味、甘みについて、国内の交通が急激に変化した明治から大正時代にかけて研究されており、日本国内の主要産地ごとに微妙な違いが認められる。多くの栽培品種があるが、「真妻」、「だるま」、「島根3号」が3大品種と云われ、その他の品種はこれらが育種母体として利用されていることが、DNA鑑定の結果判明した[28]。これらと野生在来種を交配選抜し「栽培効率」「耐病性」「食味」「保存性」などを向上させた改良品種が数多く存在している。
ワサビの辛味成分は、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンとは辛味成分が全く異なる物質で芥子菜など、アブラナ科の植物が多く含むからし油配糖体(グルコシノレート)の一種のシニグリンが、すりおろされる過程で酸素に触れ、細胞にある酵素と反応することにより生成されるアリルイソチオシアネート(6-メチルイソヘキシルイソチオシアナート、7-メチルチオヘプチルイソチオシアナート、8-メチルチオオクチルイソチオシアナート)などであり、抗菌効果[36]もあるとされる。なお、成分は品種、栽培条件、収穫時期で変化する[37][38]。また、胃がん細胞増殖抑制成分が含まれているとする研究もある[39]。わさびスルフィニル(wasabi sulfinyl)は、国産の本わさびからワサビ特有の辛みを除いた抽出した成分6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート/6-methylsulfinylhexyl isothiocyanate (6-MSITC)を指す[40][41]。また、様々な研究がされており、例えば名古屋市立大学院医学研究科は、神経細胞の再生を促し記憶力や学習能力を改善させることを発見したと報道された。1日に12.5グラムを食べれば、脳だけでなく、全身で細胞の再生が促進され、認知症予防以外にも血管拡張や骨密度強化など多彩な効果があるとされる[42]。また、中部大応用生物学の研究チームは、ワサビの辛味成分「アリルイソチアシアネート」が酸化ストレスを防ぐ体内酵素を活性化させ、人の老化や疾病を防ぐ一定の効果の他に抗アレルギー作用があると発表し報道された。[43]。
地下茎をすりおろしたものは、日本料理の薬味として寿司・刺身・茶漬け・蕎麦・鰻の白焼などに添えられる。洋食のローストビーフやスパゲッティに使われることもある。また西洋料理、特に日本料理に影響を受けた近代フランス料理でソースなどに使用されることがある。殺菌効果を持つため、生ものと一緒に食べるとよいと信じられている。
すりおろす道具としては、酸素と触れなければ辛味が出てこないため、細胞を細かく摩砕できるサメの皮で作られたおろし器が良いとされている。また、俗にワサビは金気を嫌うので金おろしを使わないという。ただし現実には、そのことによって料理店の良し悪しが付けられてしまうこともあるものの、細目の金おろしを使っている和食店、寿司店も多い。
ワサビの風味、特に辛味は揮発性のものが多いため、すり下ろして余り時間を置くと風味を失ってしまうが、すってすぐの物も味にカドが有り一般には使われない。地下茎とおろし器を供し自分でするシステムを取る店も有るが、あくまで下ろしたてという「風情」を味わう為で有る[誰によって?]。
またワサビを醤油で溶いたりしても、殆どが醤油に含まれるメチオノールで消臭されるため、風味を弱く感じるようになる。作家・池波正太郎は著書『男の作法』の中で「刺身の上にわさびをちょっと乗せて、それにお醤油をちょっとつけて食べればいいんだ。そうしないとわさびの香りが抜けちゃう。醤油も濁って新鮮でなくなるしね」と述べている[44]。一方、北大路魯山人は著書の中で「しょうゆの中にわさびをいれてしまっては辛味はなくなる。しかししょうゆの味がよくなる」と記述している[45]。
ワサビの鼻につんとくる独特の刺激的な辛さは、一般的に子供には好まれない。そのため、寿司などにワサビを入れないものを「サビ抜き」といい、子供やワサビが苦手な人のために作られる。また、逆に鉄火巻きの要領でワサビだけを巻いた寿司として「ワサビ巻き(なみだ巻き)」がある。
刻んだ地下茎を酒粕に混ぜて漬け込んだ粕漬けの一種のわさび漬けは、酒のつまみや米飯の副菜となり、静岡県の名物となっている。
島根県の山間部には山葵の風味を生かした汁かけご飯の一種、うずめ飯がある。
安曇野市穂高のわさび漬け(葉と茎は使わず根茎だけを使用)
葉や茎や花を軽く湯通しし、密閉した容器にしばらく保管しておくとワサビの辛い風味をおひたしで味わうことができる。同様に、葉や茎を醤油と一緒に瓶に詰めた醤油漬けもある。保存が利き、茶請けや付け合せ、酒のツマミなどとして利用される。ワサビの葉の醤油漬けは、巻き寿司にされることもある。花や葉は天ぷらとすることもある。島根県西部(高津川流域)と山口県東部では、新芽の部分をその独特の食感から、「ガニ芽」と称し、高級食材として活用している。
葉や茎は、成分・エキスを抽出したり、すり下ろして練りわさびやスナック菓子などの風味付けの原料として用いられる。ワサビ風味の食品には、冷菓(ソフトクリームやアイスクリーム)、米菓(せんべいやあられ)もある。但し、ワサビの辛味成分は数分で揮発してしまう為、添加物を加えてそれを抑止する等の工夫をしている。
食用外でも、アリルイソチオシアネートの殺菌作用や、植物の老化を早めるエチレンガスの発生を抑制する作用を利用して、食品・野菜用の抗菌・消臭・鮮度保持剤として冷蔵庫などで使用する製品もある。弁当用の防腐剤や米の防虫剤としても利用されている。
ワサビに似た辛味がある植物に、ワサビの名がついていることがある。ただし、必ずしもワサビと近縁ではない。
缶入りの粉わさびやチューブ入りあるいはパック入り(主に刺身用)の練りわさびが市販され、一般家庭ではこちらが広く用いられる。原料にはセイヨウワサビが使用されていることが多いが、 [46] [47] [48] ワサビの入ったものもある。根茎は高価なため、それ以外の根や茎の部分が使用される事が多い[49] [50]。[要出典]チューブ入りわさびにおいては植物油、食塩、糖分、増粘剤等を添加している物もある。品名(名称)は、いずれも「加工わさび」であるが、日本加工わさび協会の基準においては原料わさびのうち本わさびの使用量が50%未満の場合は「本わさび入り」、50%以上の場合は「本わさび使用」を表記してよいとしている[51]。
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