ミクリ属(Sparganium)はガマ科の属の一つ。主として北半球の温帯、寒帯に20種ほどが分布する。かつては独立のミクリ科(Sparganiaceae Hanin, 1811)とされていた。
多年生の抽水性水草で、地下に根茎があって横に這う。葉は二列性で、細長く、柔らかでやや立ち上がるか水面に漂う。葉の基部は葉鞘となる。
花は単性、雌雄別に球状の頭状花序をつくり、茎の上に雄花序、下に雌花序が数個ずつつく。花序はやや枝分かれすることもある。雄花、雌花共に鱗片のような花被片があるが、基部にあるのみで目立たない。雄花には3-6個の雄蘂があり、花被片から突出する。風媒花で、花粉は風によって散布される。雌花では雌蘂には複数の心皮があるが、そこから一個だけが種子となる。果実は堅果であるが、表面はやや柔らかい。
分子時計によると、ミクリ属とガマ属が分岐したのは白亜紀後期(7200万年前)だと推定されている[1]。(注)Sulman et al.[1]は化石記録を用いた年代補正にガマ科の基部を指定しているため(”The crown of the Typhaceae was given a minimum age of 70 Myr using a lognormal distribution prior based on fossil evidence”),ガマ属とミクリ属の分岐年代は推定していない。また,彼らの推定したミクリ属内の分岐年代には誤りがあることがHeled & Drummond[2]によって指摘されている。
Cook and Nicholls[3]はSparganium emersumに亜種subsp. acauleとsubsp. emersumを認めたが,この種は多系統群であることがIto et al.[4]によって指摘されている。
Sulman et al.[1]は分子データに基づき二例の雑種形成を報告しているが(S. japonicum × S. fallaxとS. angustifolium × S. emersum),後者の結論は誤りであることがIto et al.[4]によって指摘されている。