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コショウイグチ ( Japanese )

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コショウイグチ Chalciporus piperatus LC0182.jpg 分類 : 菌界 Fungus 亜界 : ディカリア亜界 Dikarya : 担子菌門 Basidiomycota 亜門 : ハラタケ亜門 Agaricomycotina : ハラタケ綱 Agaricomycetes : イグチ目 Boletales : イグチ科 Boletaceae : コショウイグチ属 Chalciporus : コショウイグチ C. piperatus 学名 Chalciporus piperatus (Bull.) Bataille (1908) 和名 コショウイグチ 英名 peppery bolete

コショウイグチ(胡椒猪口、学名Chalciporus piperatus)は、担子菌門ハラタケ亜門ハラタケ綱イグチ目イグチ科コショウイグチ属に属する菌類の一種である。

形態[編集]

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かさの裏側の様子

イグチ科に属するきのことしては比較的小さな部類に属し、かさは3-6cm程度、半球形からほぼ平らに開き、僅かに粘性を有するが乾きやすく、帯橙黄褐色であるが老成すれば暗黄褐色となり、表皮は剥げにくい。肉は淡クリーム色(柄の基部においては鮮黄色)で傷つけても変色せず、においはほとんどないが強い辛みを有する。かさの裏面はスポンジ状の管孔となり、始め淡い橙褐色、成熟時には暗黄褐色ないしコーヒー色となり、孔口は微細で多角形である。柄はほぼ上下同大あるいはときに基部がやや細まり、かさより淡色で粘性はなく、つばを欠き、基部は鈍黄色で綿毛状の菌糸塊をことが多く、中実で堅い。

胞子紋は赤みを帯びた褐色(ニッケイ色)を呈し、胞子は円筒状楕円形でその細胞壁は薄く、しばしば1個ないし数個の油滴を含む。側シスチジアは先端が細まった円筒形ないしこん棒形、あるいは先細りの紡錘状などを呈し、薄壁で無色ないし淡黄色、しばしばその表面に暗褐色あるいは黄褐色の粒状物を。かさの表皮はほとんどゼラチン化することなく、密に絡み合った菌糸で構成され、個々の菌糸の表面は(特に表皮層の外側において)顆粒状で赤褐色を呈する沈着物をかぶっている。きのこを構成する菌糸はすべて、かすがい連結をまったく欠く。

生態[編集]

夏から秋にかけ、マツ属(アカマツクロマツハイマツなど)・モミ属モミウラジロモミトドマツなど)・トウヒ属オウシュウトウヒなど)・カラマツ属ブナ属ブナイヌブナなど)・コナラ属コナラミズナラクヌギシラカシアカガシなど)・カバノキ属コナラダケカンバなど)・クリ属シイ属マテバシイ属などの樹下の地上に生える[1][2][3][4][5]

南半球では、しばしばナンキョクブナ属の一種(Nothofagus cunninghamii (Hook.) Oerst.)の樹下で見出される[6]

本種の栄養生態に関しては未だ不明な点が多い。

これまで、ハンニチバナ科ゴジアオイ属Cistus)属の植物との間に生態的関係を結ぶという報告があるが、接種試験によって証明されたわけではない[7][8]

他方、炭素13(13C)の安定同位体比の実験から、腐生菌ではないかとの説[9][10]もある。

また、現在のところ、野外の外生菌根から本種が検出された例はなく、 数多くの共生試験においても、外生菌根を形成しなかったことが報告されている [11] [12] [13] [14]

さらに、本種は系統的に、非外生菌根菌と推定されるBuchwaldoboletus lignicolaと姉妹群を形成すると考えられており、これらを総合し、Tedersooらは本種を非外生菌根菌であると結論付けている[14]

分布[編集]

北半球温帯に広く分布し、ニュージーランドおよびタスマニア北東部などにも産する。

なお、日本における最初の発見地は東京都八王子市の浅川である(1949年10月26日)[15]

類似種[編集]

外観はややアミタケに似るが、全体にやや小形でかさの粘性がほとんどないこと・かさの裏面の管孔も小さく、放射状に配列しないこと・全体に強い辛みがあること・加熱しても暗紫褐色に変わらないことなどによって区別することができる。

分類学上の位置づけ[編集]

柄の表面に、ときに微粒状の粒点を生じること・シスチジアがしばしば褐色の粒状物におおわれることなどの特徴からヌメリイグチ属に分類する意見もある[16][17]が、かさの表面の菌糸がほとんどゼラチン化しないことや、胞子紋が橙褐色を呈すること、あるいはマツ属に限定されることなく、広葉樹を含めてさまざまな樹木との間に生態的関係を結ぶ ことなどから、今日では独立したコショウイグチ属に置かれている[2][3]

食・毒性[編集]

無毒ではあるが、イグチの類としては珍しく非常に辛いため、これのみを食用とすることはほとんどない。料理に辛味を添えるために用いられることもあるというが、食用きのことして価値が高いとはいえず、市場にも出回ることはほとんどない。

脚注[編集]

  1. ^ 村田義一、1978. 原色北海道のきのこ その見分け方・食べ方. 北海タイムス社、札幌. ISBN 978-4-886-54000-3
  2. ^ a b 今関六也・本郷次雄(編著)、1989. 原色日本新菌類図鑑(II). 保育社、大阪. ISBN 978-4-586-30076-1
  3. ^ a b 高橋春樹、1992. 日本産イグチ科検索表(I). 日本菌学会ニュース 19: 23-41.
  4. ^ 五十嵐恒夫、2006. 北海道のキノコ. 北海道新聞社、札幌. ISBN 978-4-894-53390-5
  5. ^ 高橋郁夫、2007. 新版 北海道きのこ図鑑(増補版). 亜璃西社、札幌. ISBN 978-4-900541-72-6
  6. ^ Fuhrer B & Robinson R (1992). Rainforest Fungi of Tasmania and Southeast Australia. CSIRO Press. ISBN 978-0-643-05311-3.
  7. ^ Vila, J., and X. Llimona, 1999. Els fongs del Parc Natural del Cap de Creus i Serra de Verdura (Girona). II. Aproximaciò al component fùngic del Cistion. Revista Catalana de Micologia 22:95–114.
  8. ^ Vila, J., and X. Llimona, 2002. Noves dades sobre el component fúngic deles comunitats de Cistus de Catalunya. Revista Catalana de Micologia 24:75–121
  9. ^ Högberg, P., Plamboeck, A. H., Taylor, A. F. S., and M. A. Fransson, 1999. Natural 13C abundance reveals trophic status of fungi and host-origin of carbon in mycorrhizal fungi in mixed forests. Proceedings of the National Academy ofSciences of the United States of America 96: 8534–8539.
  10. ^ Taylor A.F.S., Fransson P.M.A., Högberg P., Högberg M.N., Plamboeck A.H., 2003. Species level patterns in C and N abundance of ectomycorrhizal and saprotrophic fungal sporocarps. New Phytologist 159: 757–774
  11. ^ Godbout C., J.A. Fortin, 1985. Synthesized ectomycorrhizae of aspen: fungal genus level of structural characterization. Canadian Journal of Botany 63:252–262.
  12. ^ Kasuya, M. C. M., and T. Igarashi, 1996. In vitro ectomycorrhizal formation in Picea glehnii seedlings. Mycorrhiza 6: 451-454.
  13. ^ Yamada A., K. Katsuya, 1995. Mycorrhizal association of isolates from sporocarps and ectomycorrhizas with Pinus densifolia seedlings. Mycoscience 36:315–323.
  14. ^ a b Tedersoo L., T.W. May, E.S. Matthew, 2010. Ectomycorrhizal lifestyle in fungi: global diversity, distribution, and evolution of phylogenetic lineages. Mycorrhiza 20: 217–263.
  15. ^ 今関六也・土岐晴一、1954. 浅川実験林のキノコ. 林業試験場研究報告(67):19-71 + 図版 1-7.
  16. ^ 今関六也・本郷次雄、1965. 続原色日本菌類図鑑. 保育社、大阪. ISBN 978-4-586-30042-6.
  17. ^ Murata, Y., 1976. The boletes of Hokkaido 1. Suillus Micheli ex S. F. Gray em. Snell. Transactions of the Mycological Society of Japan 17: 149-158.
  • 本郷次雄監修 幼菌の会編 『カラー版 きのこ図鑑』 家の光協会、2001年 ISBN 4259539671
  • 前川二太郎監修 トマス・レソェ著 『世界きのこ図鑑』 新樹社、2005年 ISBN 4787585401
  • 今関六也ほか編 『日本のきのこ』 山と渓谷社、1988年 ISBN 4635090205

外部リンク[編集]

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