タラノキ(楤木、桵木、学名、Aralia elata)はウコギ科の落葉低木。新芽を「たらのめ(楤芽)」「タランボ」などと呼び、スプラウトとして食用に販売もされている。テンプラ等に調理される。「タラ(楤、桵)」と呼ばれることもある[1]。地方によって呼び名があり、タランボ、オニノカナボウともよばれている[2]。
高さは2–4 m程度、あまり枝分かれせずにまっすぐに立ち、葉は互生で先端だけに集中する[3]。樹皮には幹から垂直に伸びる棘が多くある。
葉は奇数2〜3回羽状複葉で[3]、全長が50–100 cmにも達する大きなものである。全体に草質でつやはない。葉柄は長さ15–30 cmで基部がふくらむ。小葉は卵形から楕円形で長さ5–12 cmで裏は白を帯びる。葉全体に毛が多いが、次第に少なくなり、柄と脈状に粗い毛が残る。
夏の8月頃に、多数の小さな白い花を複総状につける花序を一つの枝先に複数つける[3]。花弁は三角形で5枚、雄蕊は5本で突き出ている。自家受粉を防ぐため、雄蕊が先に熟して落ちた後、5個の雌蕊が熟し、秋には黒色で球状の果実となる[3]。
分類上は幹に棘が少なく、葉裏に毛が多くて白くないものをメダラ(f. subinermis)といい、栽培されるものはむしろこちらの方が普通である。
日本各地、東アジアに分布する。
林道脇など日当たりの良い山野に自生する[3]。いわゆるパイオニア的な樹木であり、森林が攪乱(かくらん)をうけると、たとえば伐採跡地に素早く出現し、生育環境にもよるが1年で20–60 cmほど伸び、5年で3 mに達するものも珍しくはない。
特に有名なのは新芽の山菜としての利用であるが、樹皮は民間薬として健胃、強壮、強精作用があり、糖尿病にもよいといわれる。
新芽の採取時期は桜の8分咲きころに同期しており、里の桜がタラの芽の採取時期でもある。採取は先端から上に向いた1番の芽と、その脇から斜めに伸びる2番程度までとし、あとは昨年に伸びた枝を見て芽の候補が残っているか確認する。一定の時期を過ぎると候補と成る芽の素は枯れて発芽しない。脇芽を含め全ての芽を摘み取ると立枯れする。
スーパーなどで見られる綺麗な緑色のタラの芽は昨年伸びた枝を伐採したもので、敷き詰めたオガクズや水の入ったバケツに挿しておいたもの。出荷前にビニールハウスで気温を上げ発芽させる。天然ものよりもだいぶ味・香りが弱く、水っぽさがある。天然もののタラの芽のテンプラは冷えても歯ごたえがしっかりしているが、枝切りして芽吹かせたタラの芽はテンプラが冷えるとしぼんでしまう[要出典]。
若芽をテンプラにするのが一般的で、口いっぱいにひろがる独特の芳香が特徴的である。単にゆがいておひたしやゴマの和え物にしたり、油で炒めて食べてもよい。
タラノキ皮として、樹皮は楤木皮(たらのきかわ)、根皮は楤根皮(そうこんぴ)とよんで生薬として用いられる[3]。樹皮の部分は刺老鴉(しろうあ)ともよばれるが、中国薬物名の楤木はタラノキの仲間の別種である[2]。
乾燥させたタラノキ皮を煎じて、1日3回に分けて服用すると、血糖降下、健胃、整腸、糖尿病、腎臓病に効用があるといわれる[3]。また、芽をたべることで同じような効果が期待できると言われている。根皮も「タラ根皮」(タラこんぴ)という生薬で、糖尿病の症状に対して用いられる。高血圧や慢性胃炎には皮つき枝を刻んだものでお茶代わりに飲用することもでき、常用しても支障は出ない[3]。暖める作用がある薬草で、熱があったり、のぼせやすい人や、妊婦への服用は禁じられている[2]。
膵臓β細胞に障害を与えた糖尿病モデルに対してタラノメ抽出物を投与したが改善効果は認められなかった。一方、ラットへのブドウ糖やショ糖の負荷投与に際して血糖値上昇が7-8割も抑制された。このことから、タラノメは糖尿病の治療というよりも予防や悪化防止に効果があると考えられるとする報告がある[6]。 なお、タラノキ材は小細工用に使われる[7]。